再訪「料紙のよそおい」展@五島美術館

前回の記事で、解説などについていくつか疑問を呈したのですが、訂正されてましたね。

聖武(2)の書き出し部分「現是我聞」と書き損じています。差摩現報品の品頭部分。大聖武は誤写が多いという話を聞いたことがありますが、実際多いのか否かの検証は見たことがありません。誰か調べているのかな?

荼毘紙の解説で「日本でも原料(檀)が入手できるため、荼毘紙は、従来考えられていた中国製ではない可能性があり」とありました。以前、荼毘紙の原料は檀、故に日本製である(よって大聖武は和経である)というような説明を見たことがあり、飛躍がある(檀が原料であるから中国製・朝鮮製ではなく日本製であるということについての説明がない)点に疑問をもっていました。やはりこの点はちゃんと煮詰めないとダメですね。

聖武(4・5・6)。前回、この3巻は今更一部一切経で、4は山部諸公筆、5と6は他田嶋万呂筆じゃないかという話をしました。残念ながら聖語蔵にある両人の筆跡と比べる機会がなかったので、はっきりせず。4は図版あるのでともかく、5と6は次の展示の機会までおあずけ。

紫紙金字華厳経(7・8・9)。7と8は同筆とのこと。前回9は異筆でしょうと書きましたが、今回再び比べてみると似ているようにも見えます。同筆かも。正倉院文書を見ると、10巻以上の経典を写すとき10巻ごとに写すケースがよく見られるので、この3点(巻61・63・67)も1セットで1人が担当したのでしょうか。金字の輝きは7がよく、8・9は若干赤味が差しているようにも見えました。照明の関係か、それとも金泥の出来に多少のムラはあったのか。

染紙帖(19)は山門切、色紙最勝王経断簡、目無経断簡、草書摩訶止観断簡、装飾法華経断簡。色紙最勝王経は、紫紙と藍紙の呼び継ぎ。7・8・9の紫紙とはまったく異なる紫紙ですね。時代的には近いもののはずですが。材料は同じ紫根かな。だとすれば違いは技法か程度か。藍紙は、ツレの料紙についていわゆる漉き染め(≠漉き掛け)であるという髙橋祐次さんの説を以前引きました。

鴻池家伝来の手鑑(20)の太田切2葉は、唐紙と蠟箋。蠟箋の方の金銀泥下絵の金泥の状態がいいですね。その余の時代の降った装飾料紙、複製本で見たときよりくすんだ感じで見栄えせず。期待していただけにちょっと残念な感じ。この手鑑、展示された部分以外にも素晴らしい断簡が多く、他にもいろいろ見たいなと複製本をめくりながら思ったものでした。

亀山切(24)。雲紙(打曇)というのは雲を彷彿とさせるような気がしますけど、しかしそれはなんとなく言葉に引きずられているだけなのかもしれないなと思ったりします。そもそも雲紙とか打曇という語がどこまで遡ることができるのか(日葡辞書に「うちぐも」がある由)。この亀山切の料紙を見てると雲というよりはむしろ小波を思い浮かべるんですよね。果たして当時から雲という認識だったのでしょうか。

泉福寺焼経(29)。巻4で大正蔵9巻419頁上中段。

高山寺尼経(30)。これ初めて行ったとき、展示テーマに沿っているのかなと疑問でした(見せていない表紙は金銀による装飾がなされているらしいので、そこを見せるものなんじゃないのと思ったり)。しかし、よく考えてみると漉き返し紙を見せたかったのかなと。染めの一種(というより染めではないけど似たような効果がでたもの)として展示していたのでしょうか。

唐紙朗詠(33)。昨秋の平安古筆の名品展で出ていた書芸文化院所蔵の一本竹文の印象深い唐紙がありましたが、それのツレですね。これは蓮唐草だったかな。しかし、あの一本竹文は印象深い、非常にいいものでした。

戸隠切(37)。具引き説と否定説の両説ありと以前書きました。今回のキャプションでは「胡粉を具引きした上に」と具引き説。

嵯峨本のつれづれ草(39)。キャプションに「誤植部分の文字は四角く切り抜き、裏から紙を貼り込み、活字を捺印して訂正している」とありましたが、展示箇所にこの訂正はなかったように思います(展示替え前後ともに)。

伊勢物語切(52)。キャプションに「料紙は、雲母や銀の箔を散らしており」、古筆学大成の解説では「料紙は鳥の子の地紙一面に、雲母砂子を微塵に撒き、さらに金銀の小切箔をまばらに撒く、すこぶる華麗な調度本の断簡である」。この1葉しか挙げていない学大成の解説はこの1葉のみについての解説。金箔があるのかないのかについて違いが見られます。なお、両者が言及する雲母については、確認できませんでした。次の展示では是非みやすいケースに展示していただけると。

装飾観普賢経断簡(56)は相剥ぎした紙背を呼び継ぎしているため面白いものが見えます。どういう理由によるのかは知らないのですが、金銀箔や泥は紙の裏に影響を及ぼして紙が黒ずみます。この断簡で言うと表側の中央上の四角く黒ずんだところの真裏に当たる部分には対応する金箔が貼られており、その紙背の金箔の上にある黒ずみにも対応する表側の金箔を見ることが出来ます。

消息経である観普賢経(65)。界線の引き方が面白いですね。金銀の2重界で、天地は金の内側に銀。罫は金の左に銀で銀は天地とも金の線まで引いています。

菊と卯花下絵の和歌短冊(68・69)。銀で描かれた菊花と卯花が黒化して黒くなっていますが、はっきりとしたムラの少ない黒色で、意図してそういう色を狙ったと思われるような出来でした。

小倉山荘色紙和歌(74)の軸装の方は紙表具でしょうか。中廻しは布っぽくもあったのですが、そういう塗りなのか。継ぎ紙料紙に紙表具を合わせるのはシャレてていいですね。