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所在不明の重文写経・版経

5月13日に文化庁から「国指定文化財(美術工芸品)の所在確認の現況について」が発表されました。

www.bunka.go.jp

ここに掲載された「所在不明の国指定文化財(美術工芸品)一覧」(PDF)は情報が少なく、これだけでは具体的に何であるかわからなかったので、少し調べました。

参考にしたのは、文化庁[監修]・毎日新聞社図書編集部[編]『国宝・重要文化財大全 7 (書跡 上巻)』(毎日新聞社、1998年、NDLサーチ)です。

124. 版本法華経〈巻第二/〉

平安|1巻|文化遺産データベース
「承暦四年六月三十日点了」の奥書がある版本。(百万塔陀羅尼を除けば)現存最古の日本の版本である天喜元年の仏説六字神呪王経(石山寺)に次ぐもので、寛治2年に観増が開版した春日版の成唯識論8巻(巻3と4を欠く、聖語蔵経巻)に先んじます。

125. 是法非法経

奈良/740|1巻|文化遺産データベース
天平12年3月15日藤原夫人願経(元興寺経)の1巻。

126. 黒氏梵志経

奈良/740|1巻|文化遺産データベース
同じく元興寺経。元興寺経の現存は10巻ほどでしょうか。とりあえず私が確認できたのは

  • 一切施王所行檀波羅蜜経(根津美)
  • 太子刷護経(書芸文化院)
  • 阿難四事経(京博)
  • 文陀竭王経(東博
  • 実相般若波羅蜜経(五島美)

他に田中塊堂さんの『日本古写経現存目録』(思文閣、1973年、NDLサーチ)には

  • 道行般若経巻5(神護寺
  • 瑜伽師地論巻99(大雲寺)
  • 婆娑羅王諸仏供養経(檀王法琳寺)
  • 身観経(五島美)
  • 仏説四願経(五島美)
  • 央掘魔羅経巻1(個人)

およびこの所在不明の2巻が挙げられています。すべて現存したとしてわずか13巻。

127. 註楞伽経〈巻第二、第六/〉

奈良/740|2巻|文化遺産データベース
天平12年5月1日光明皇后願経(五月一日経)。この2巻については「註楞伽経の五月一日経本と伝魚養筆本 - ときかぬ記」でとりあげています。巻3と5が書陵部、巻7が大東急記念文庫(巻首欠)。

128. 般若心経

奈良/755|1巻|文化遺産データベース
隅寺心経ですが、数ある隅寺心経の中でも重要な1巻。奥に「天平勝宝七年料」と書かれたものです。

129. 增壹阿含経〈巻第四十九/〉

奈良/759|1巻|文化遺産データベース
善光朱印経。この経は天平宝字3年12月23日科野虫麻呂筆の1巻です。山下有美さんの「嶋院における勘経と写経」*1に善光朱印経の奥書が35集成されています。ここにはフリーア・サックラー美術館が巻末断簡を所蔵する阿含経巻21が抜けていますので、合わせると36。ただしこれは、巻末断簡が残っている、または目録などに写されたことによって知られた奥書も含みます。完本またはそれに近く残り、かつ所在がはっきりしているのは半分程度の20巻足らずでしょう。

130. 中心経

奈良|1巻|文化遺産データベース
「嶋院における勘経と写経」によると、こちらも善光朱印経とのこと。しかし、善光朱印はありますが、奥書はないようです。

131. 瑜伽師地論〈巻第七十八/〉

奈良/767|1巻|文化遺産データベース
行信経。瑜伽師地論に限ると、

他に『目録』では(個人名はボカします)

  • 巻5(個人)
  • 巻58(個人)
  • 巻69(根津美、印有、願文なしか)
  • 巻82(個人、首欠有印、願文なしか)

132. 法華経〈五百弟子受記品/〉

奈良|1巻|文化遺産データベース
1行12字の大字経。薬草喩品が久保惣コレクション、法師品が京博(e国宝)にあります。

133. 四輩経

奈良|1巻|文化遺産データベース

134. 法華経〈巻第三/〉

奈良|1巻|文化遺産データベース
藤南家経。奥に「藤南家経」と書かれています。藤南家経は他に五島美の法華経巻5のみ。

135. 金光明最勝王経〈自巻第三至巻第五/〉

平安|1巻|文化遺産データベース
平安時代、1行34字の細字経。

136. 根本説一切有部毘奈耶尼陀那目得伽攝頌

奈良|1巻|文化遺産データベース

137. 在家人布薩法〈巻第七/〉

奈良|1巻|文化遺産データベース
原表紙と第1紙継目に「東大寺印」が捺されています。孤本とのこと。(参考)シンポジウム2014 赤尾1

150. 仮名法華経〈巻第三/〉

鎌倉|1帖|文化遺産データベース
綴葉装、押界、半葉7行。

155. 涅槃経集解〈巻第七十一残巻/〉

奈良|1巻|文化遺産データベース
1行15字の注経です。

161. 紙本墨書飛部造立麿写経試字

奈良|1幅|文化遺産データベース
経典ではありませんがついでに。正倉院文書。『大全』に図版が掲載されていませんでした。

*1:正倉院文書研究会[編]『正倉院文書研究 7』(吉川弘文館、2001年)所収、NDLサーチ

*2:宮内庁書陵部編『図書寮典籍解題 漢籍篇』(昭和35年)では「後同寺の僧相慶が長寛前後八年に亘り修覆を加え、三百余巻を補写した。掲出本は「法隆寺一切経」の印があるので、その補写経の一と思われる。」とします。素直に読めば補写経である根拠は「法隆寺一切経」印があることのみなので根拠不十分かと。ただし、一見すれば奈良写経か平安写経かは判別可能なので、該経は補写経かと思いますが、いちおう挙げておきます。