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東博の古筆・古写経展示(2016年4月から5月)

仏教の興隆―飛鳥・奈良

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 仏教の興隆―飛鳥・奈良 作品リスト
本館 1室 2016年4月12日(火) ~ 2016年5月15日(日)

大般若経 巻第三百二十九(薬師寺経)

重文|1巻|奈良時代・8世紀|奈良・薬師寺

撮影禁止でした。

薬師寺経または魚養経。薬師寺所蔵の重文33巻のうちの1巻で、展示は巻頭部分、「薬師寺印」朱円印2顆を見せます。濃い茶色(こげ茶色)の料紙に、力強い筆跡、表紙はおそらく後補で、軸端は当初のものでしょうか。

去年の7月にもこの巻329を展示しています(なお神亀経1巻1幅との組み合わせも同じ)。

大般若経 巻第四百六十八(神亀五年五月十五日長屋王願経)

重文|1巻|奈良時代神亀5年(728)|個人蔵

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神亀経巻467。展示は巻末で、発願文を見せます(去夏の展示は中ほどでした)。

以下、上代文献を読む会[編]『上代写経識語注釈』(勉誠出版、2016年、NDLサーチ)に依ります。神亀経の項の執筆は、影山尚之さん。

仏弟子長王、至誠発願、奉写大般若経一部六百巻」すなわち長屋王発願の大般若経。ただし、長屋王の私的な写経ではなく、公的な側面のある写経であろうという指摘があります。その目的は発願文に曰く2つあって(現代語訳は『上代写経識語注釈』のを利用させていただきました)、「以此善業、奉資登仙二尊神霊(この、写経という善い行いによって、すでに天上界にいらっしゃる貴い両親のみたまをお援け申しあげたい)」および「又、以此善根、仰資現御寓天皇并開闢以来代代帝皇(また、この写経という善い営みを因として、つつしんで今上天皇ならびに開闢以来歴代皇帝をお援け申しあげたい)」。つまり両親や歴代天皇のため。

神亀五年歳次戊辰五月十五日」は発願の日で、「神亀五年歳次戊辰九月廿三日」は完成の日。「『続日本紀』によればこの間に皇太子(基王)の病臥と薨去があった」。

最後から2行目「検校藤原寺僧道慈」の「藤原寺」は興福寺を指します。「道慈」は「奈良時代三論宗の入唐学問僧」。願文8行目の「三宝覆護、百霊影衛」について、この三宝と百霊を対にすることが、『懐風藻』所収の道慈の詩「五言、在唐奉本国皇太子」の「三宝持聖徳、百霊扶仙寿」にも見えるので、この願文に道慈が関わった可能性が示唆されています。

根津美術館所蔵の巻267は5紙を継いだもので1紙の幅は176cmと通常の料紙の3から4倍の長さ(天平尺で6尺ほど)。これは国家珍宝帳に用いられた3尺相当の料紙や正倉院文書に見える4尺の長麻紙を遥かに超える長さで、舶載の料紙と推定されています。この巻468も「用長麻紙陸張」とあることから同様の料紙(なお目測おおよそ1.5mのこの展示では継目は尾題前の1箇所のみしか確認できません)。

最後から5行目「作宝宮」とは長屋王の邸宅のひとつである佐保宅の雅称で、「作宝宮」の役人がこの書写事業に関与するのは、「佐保宅が写経の場に提供された可能性を示唆するであろう」とのこと。

なお、この巻には白点が打たれています。

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神亀五年歳次戊辰五月十五日仏弟子長王
至誠発願奉写大般若経一部六百巻其経
乃行行列華文句句含深義読誦者蠲耶去
悪披閲者納福臻栄以此善業奉資
登仙二尊神霊各随本願往生上天頂礼弥勒
遊戯浄域面奉弥陁並聴聞正法俱悟无生忍又
以此善根仰資  現御寓天皇并開闢以来代代
帝皇三宝覆護百霊影衛現在者争栄於五岳
保寿於千齢  登仙者生浄国昇天上聞法悟
道脩善成覚三界含識六趣稟霊无願不遂有心必
獲明矣因果達焉罪福六度因満四智果円
 神亀五年歳次戊辰九月廿三日書生散位寮散少初位下張上福
   初校生式部省位子无位山口忌寸人成
   再校生式部省位子无位三宅臣嶋主
   装潢図書寮番上人无位秦常忌寸秋庭
   検校使作宝宮判官従六位上勲十二等次田赤染造石金
   検校使陰陽寮大属正八位上勲十二等楢曰佐諸君
   検校薬師寺僧基弁
   検校藤原寺僧道慈
      用長麻紙陸張

大般若経 巻第四百六十五 断簡(神亀五年五月十五日長屋王願経)

1幅|奈良時代神亀5年(728)|B-1812

C0005957 大般若経跋(神亀5年長屋王願経) - 東京国立博物館 画像検索

同じく神亀経巻465の巻末断簡です。横寸61.5cm。

仏教の美術―平安~室町

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 仏教の美術―平安~室町 作品リスト
本館 3室 2016年4月12日(火) ~ 2016年5月15日(日)

大乗百福相経

1巻|平安時代・仁平2年(1152)|高嶋九藏氏寄贈・B-1639

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『日本古写経現存目録』p154-156の「大門寺一切経(其一)」にあたる1巻でしょうか。ただし、該巻は『目録』に未収。

仁平二年正月晦日摂州観音寺書写畢 願主経尊智成坊
                 執筆良意覚乗坊

文殊師利根本大教王金翅鳥王品(神護寺経)

1巻|平安時代・12世紀|個人蔵

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神護寺経。首題下の「神護寺」朱角印は消されています。

紺紙金字一字宝塔法華経断簡(太秦切)

1巻|平安時代・12世紀|B-1643

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C0049119 古写経(一字宝塔) - 東京国立博物館 画像検索

太秦切。法師品残巻。聖徳太子が黒駒に乗って富士山まで飛ぶ伝説を描く見返しは後補。いつごろの物なのでしょうか?

笠置切

1幅|万里小路宣房筆|鎌倉時代・14世紀|B-12-22

踊出品断簡。万里小路宣房真筆。

書状

1幅|円爾筆|鎌倉時代・13世紀|B-2525

C0075393 書状 - 東京国立博物館 画像検索

キャプションによると「建長4年(1252)九条忠家東福寺に寄進した京都九条御領内の田地に関するものと思われ、剛健荘重な書風である。」とのこと。なお、現地に翻刻あります。

四天王寺縁起残巻

重文|1巻|惟宗季重筆|平安時代・承安3年(1173)|京都・三千院

撮影禁止でした。最近展示があったばかりですね。展示も同じく17条憲法のところ。

東博の古筆・古写経展示(2016年1月から2月) - ときかぬ記

申日児本経

1巻|勝賢筆|平安時代・永久3年(1115)|B-1641

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法隆寺一切経

承久三年歳次乙未七月十日書写勧進僧勝賢
施主目安里住人清原安清結義所生愛子為息灾延安穏法界衆生平等利益也

宮廷の美術―平安~室町

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 宮廷の美術―平安~室町 作品リスト
本館 3室 2016年4月12日(火) ~ 2016年5月15日(日)

古筆手鑑「浜千鳥」

重美|1帖|奈良~江戸時代・8~17世紀|個人蔵

撮影禁止でした。展示は聖武天皇から尹大納言師賢卿まで。

展示中で特にメジャーなのは大聖武くらいでしょうか。写真が撮れれば、または資料館に画像があるなどして画像を入手できれば、いろいろ調べることもできたのでしょうが、ちょっとこれはハードルが高いのでパスします。キャプションによると、蜂須賀家伝来で、2帖451葉とのこと。



なお、「東博に行ってきました - ときかぬ記」ですでに取り上げていますが、他に本館特別第1室に「伝源俊頼筆 拾遺抄切」、本館5室に「伝藤原行成筆 関戸本古今集切」(ともに4月24日まで)が展示されています。