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東博の古筆・古写経展示(2015年12月から2016年1月)

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正門左手のメタセコイアとイチョウがきれいに色づいていました。

仏教の興隆―飛鳥・奈良

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 仏教の興隆―飛鳥・奈良 作品リスト
本館1室 2015年2月8日(火)~2016年1月17日(日)

大般若経和銅五年十一月十五日長屋王願経)

国宝|1帖|奈良時代和銅5年(712)|滋賀・太平寺蔵

撮影禁止でした。巻206。折本装(5行1折)。内題から2折オまで補筆。

巻末修理奥書(別紙)

近江州甲賀郡鮎河郷祥雲山大平禅寺常什
 一巻為雪眼童子菩提 修補施主当郷谷川孫太郎
享保三年戊戌十月吉辰 現住比丘竜乙記之

瑜伽師地論 巻第四十八(行信願経)

1巻|奈良時代神護景雲元年(767)|千葉・円福寺蔵

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行信願経。願文によると行信の発願によって法華経華厳経大般若経、瑜伽師地論など2700巻が書写されたが、書写の功を終える前に行信が没し、弟子の孝仁などが意志を継いだものです。願文末尾の年記は始め「天平神護三年九月五日」と書いていましたが、改元のため「天平神護三」を削除して上から「神護景雲元」と書いています。

法隆寺伝来で、現在も法隆寺大般若経数百巻が伝わります。これについて春名好重さんの『古筆大辞典』では「現在四百二巻残っているが、平安時代末の写経や鎌倉時代・室町時代の版経などがまじっていて、『行信経』は七巻だけである。」とあります。田中塊堂さんの『日本古写経現存目録』を見ると、願文を有するのが巻384、363、432、494、497、498、499の7巻ということなので、この7巻を指しているのだと思います。ただし、同じく塊堂さんの『日本写経綜鍳』では「因にこの経には願文のないものが多くて識別に困難のようであるが、表紙、軸と虫損の特長を以てすれば一瞥明らかにされる」として願文のないものでも行信願経と認められるものもあるようです。結局何巻あるのでしょうか? なお『現存目録』には更に願文のある法華経と瑜伽師地論が1巻づつ、また寺外に出た大般若経、瑜伽師地論、華厳経が数巻づつ挙げられていますが、この瑜伽師地論巻48は載っていません。

別名虫喰経で、この巻も上下が虫喰い激しく補修しています。

『古筆大辞典』によると「『大般若経』は東院に伝えられ、「上宮王院行信御真筆大般若経」といわれ、中世、寺の大事の際に真読された」とのこと。

若夫法海渕曠譬彼滄波慧日高明等斯
霊曜受持頂戴福利無辺読誦書写勝業
難測是以大法師諱行信平生之日至心発願敬
写法花一乗之宗金皷滅罪之文般若真
空之教瑜伽五分之法合弐阡漆伯巻経
論奉翊 聖朝 退報四恩兼救群品而仮
軆如浮雲草命似電光未畢其事含玉従化
弟子孝仁等不勝風樹之傷敬弁先願仰願
挂畏 聖朝金輪之化与乾坤無動長遠之
寿争劫石弥遠 退願䔍蒙四恩枕涅槃之
山坐菩提之樹位成灌頂力奮降魔広及
法界六道有識離苦得楽済登覚道
   神護景雲元年九月五日敬奉写竟

隅寺心経

1幅|伝空海筆|奈良時代・8世紀|筒井邦子氏寄贈・B-3215

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仏教の美術―平安~室町

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 仏教の美術―平安~室町 作品リスト
本館3室 2015年12月8日(火)~2016年1月17日(日)

平行政願文

重文|1巻|世尊寺定成筆|鎌倉時代・弘安7年(1284)|B-19

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平行政願文 - e国宝

『日本名跡叢刊44』(二玄社、1980年、NDLサーチ)に翻刻小松茂美さんによる解説、築島裕さんによる釈文および解説が載ります。

小松さんは下絵の画風や顔料の質から舶載料紙と見ています。また、筆者推定は、当時活躍していたのが経尹と定成で、この筆跡は経尹ではないので定成という伝承を追認するというもので、明確な証拠(署名入り真筆と同筆であるなど)があるというわけではないようです。

築島さんによると、第1紙と第2紙の間に若干の欠損があるものの、それが第1紙の尾か第2紙の首かははっきりしないとのこと。

紺紙金字無量義経(平基親願経)

1巻|平安時代・治承2年(1178)|B-3098

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C0041025 紺紙金字無量義経 - 東京国立博物館 画像検索
C0041026 紺紙金字無量義経 - 東京国立博物館 画像検索

以前も書いたのですが、センチュリー文化財団が所蔵する僚巻の観普賢経に「治承四年」の年記をもつ奥書がある(センチュリー文化財団 オンラインミュージアムの作品写真3、右クリックで拡大できます)にもかかわらず、東博がこの無量義経の年代を「治承2年(1178)」としている理由がよく分かりません。

キャプションによると見返し絵は「童舞の十種供養伝供の図」とのこと。

紺紙金字一字宝塔法華経 法師品断簡(太秦切)

1巻|平安時代・12世紀|B-1643

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太秦切、または太秦類切。見返しは後補。聖徳太子が黒駒で富士山を越える説話が描かれています。出発点の右下の滝は何処を指しているのでしょうか?

宝篋印陀羅尼経

重文|1巻|平安時代・12世紀|大阪・金剛寺

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展示は後半部。供養のために故人の書いた消息などを転用して写経するいわゆる消息経の一例で、この経では消息のみならず和歌や今様などが書かれた料紙、また葦手絵なども見られ注目されています。

國際佛教學大學院大學日本古寫經研究所文科省戰略プロジェクト實行委員會 編『金剛寺藏寶篋印陀羅尼經』(國際佛教學大學院大學日本古寫經研究所文科省戰略プロジェクト實行委員會、2013年、NDLサーチ)に詳しく解説されていますが、時間と機会がなくまともに読めていません。

金光明経巻第二、巻第四(目無経)

重文|1巻|鎌倉時代・12世紀|B-3177

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金光明経巻第2・4(目無経) - e国宝

前14行は、巻2、大正蔵16巻342頁上段22行目から中段8行目。後40行は、巻4、同355頁上段1行目から中段18行目。

おなじみの目無経。金光明経 巻第三 - e国宝金光明経残巻 (目無経) - e国宝白描絵料紙下絵経(目無経)などが僚巻です。

華厳経断簡(目無経)

1巻|鎌倉時代・12世紀|B-2392

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華厳経(60巻本)巻53、大正蔵9巻732頁上段29行目から中段28行目。キャプションには「巻第9」と書かれていますが間違い。

キャプションに書かれたもう1枚の断簡は、この断簡に後接する6行(同中段28行目から下段5行目)で、以前展示された時にとった写真があるので掲載します。

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さらにフォッグ美術館がツレと思しきもの(11行、同じく巻53、同734頁上段7行目から28行目)を所蔵してます。

www.harvardartmuseums.org

こちらは、おなじみでない方の目無経。おそらく上の金光明経とは無関係のものだと思いますが、これはどういった物なのでしょうか? 華厳経60巻全巻がこのような白描下絵料紙に描かれたとは分量的に思えないんですよね。いろいろな料紙を交用したもので、そのなかに白描絵の転用があったのか。

蝶鳥下絵法華経断簡

1幅|平安時代・11世紀|個人蔵

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法華経巻1・方便品、大正蔵9巻6頁上段10行目から中段25行目。丁子吹き金銀泥下絵。28行でちょうど1紙でしょうか。先日五島美で館蔵の蝶鳥がでてましたが、それも同じ方便品で28行。少なくともこの巻1の後半が切断されたのは、それほど昔ではなさそうです。

色紙華厳経断簡(泉福寺経)

1幅|平安時代・12世紀|筒井邦子氏寄贈 B-3216

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華厳経(60巻本)巻7、大正蔵9巻440頁上段6行から中段4行目。キャプションには「巻第15」と書かれていますが疑問。大正蔵本と調巻が異なるか、または80巻本との混同があるでしょうか。藍紙に金の揉箔撒き。以前見たことのある別の巻はもっと緑がかっていたかと思いますが、こちらは薄い青。

宮廷の美術―平安~室町

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 宮廷の美術―平安~室町 作品リスト
本館3室 2015年12月8日(火)~2016年1月17日(日)

紫式部日記絵巻断簡

重文|1幅|鎌倉時代・13世紀|A-12091

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紫式部日記絵巻断簡 - e国宝

国宝五島本・藤田本のツレ。

こよひ少輔のめのといろゆる
さるこゝしきさまうちし
たり宮いたきたてまつり
御帳のまにて殿のうへいたき
うつしたてまつり給てゐさ
りいてさせ給へるほかけの御さ
まけはひことにめてたし
あかいろのからの御そちすり
の御もうるはしくさうそき給
へるうもかたしけなくもあはれに
もみゆ大宮はえひそめのい
つへの御そすわうの御こう
ちきたてまつれりとのもち
ゐはまいりたまふ

円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書

国宝|1巻|小野道風筆|平安時代・延長5年(927)|B-2405-1

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円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書 - e国宝

天台座主少僧都法眼和尚円珍
   右可贈法印大和尚位号智証大師
勅慈雲秀嶺仰則
弥高法水清流酌之
寧尽故天台座主
少僧都円珍戒珠
無塵慧炬有照渡
大瀛而求法騁異域
而尋師済物為宗泛
舟檝於苦界利他在
意加斧斤於稠林
是以蒙霧斂其翳
昧朗月増其光明遣
烈永伝余芳遠播追
憶志節足以褒め崇
冝贈法印大和尚位
諡号智証大師可依
前件主者施行
  延長五年十二月廿七日
   三品行中務卿 敦実 見□
   従四位上行中務大輔源朝臣 国淵 
   従五位下守中務少輔源朝臣 興平

勅如右牒到奉行
  延長五年十二月廿七日
参議従四位下守治部卿兼讃岐守 当幹
治部大輔 闕
参議正四位下守左大弁兼讃岐権守 悦
告法印大和尚位智証大師 奉
勅如右符到奉行
          大録 闕
治部少輔従五位下 公彦 少録 茂倫
          大録 直幹
   延長五年十二月廿七日

唐詩断簡(絹地切)

重文|1幅|小野道風筆|平安時代・10世紀|広田松繁氏寄贈・B-2893

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唐詩断簡(絹地切) - e国宝

古筆学大成25未詳漢籍1伝小野道風筆未詳漢詩集切(一)

学大成は見出しでは「伝」を付けてますが、解説では道風真筆と認めています。

東洛優閑□暮春邀勧
多是白頭賓官斑朱
紫皆相及年紀高低次
第勻聯韻毎言松竹意
停盃多説古人今更無
外事来心膂空有清
虚入思神酔舞両廻迎
勧酒狂哥一曲楽余身
今朝何事情偏重同
作明時列任臣
 衛尉卿致仕馮翊吉

白氏文集断簡(絹地切)

1幅|伝藤原佐理筆|平安時代・10世紀|広田松繁氏寄贈・B-2894

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C0010086 絹地切 - 東京国立博物館 画像検索
C0008419 絹地切 - 東京国立博物館 画像検索

古筆学大成25藤原佐理筆絹地切本白氏文集、図版18(p20-21)

展示では「伝」をつけていますが、学大成は佐理真筆と認定。

2紙の呼継ぎで、前2行は巻16の「晩春登大雲寺南楼贈常禅師」、後8行は巻54の「宿霊厳寺上院」。

  贈常禅師
花尽頭新白登楼意

高々白日上青林客□
僧帰独夜深葷血
屏除唯対酒歌鐘
於散只留琴更無
俗物当人眼但有泉
洗我心最愛暁亭
東望好大湖煙水
緑沈々

白氏文集切

1幅|伝藤原行成筆|平安時代・11世紀|B-12-10

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C0010402 白氏文集切 - 東京国立博物館 画像検索

古筆学大成25白氏文集10藤原行成筆白氏文集切、図版33(p47)

こちらも展示は「伝」をつけていますが、学大成は後嵯峨院本との比較から行成真筆と認めています。

年秋太原人白楽天見而愛之若遠行客過故
郷恋々不能去因面峯腋寺作為草堂明年
春草堂成三間両柱二室四牖広袤豊殺一
称心力洞北戸来陰風防徂暑也敞南栄納陽
日虞祁寒也木断而已不加丹墻圩而已不加白磩

古今和歌集(元永本) 上帖

国宝|1帖|平安時代・12世紀|三井高大氏寄贈|B-2814-1|2016年1月2日~

古今和歌集(元永本) 上巻 - e国宝

年明けからの展示です。

茶の美術

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 茶の美術 作品リスト
本館4室 2015年10月6日(火)~2015年12月23日(水)

熊野懐紙

重文|1幅|飛鳥井雅経筆|鎌倉時代・正治2年(1200)|B-2404|2015年11月17日~

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熊野懐紙 - e国宝

 詠行路氷和哥
   侍従藤原雅経
ふゆされやしけき
のさはのあさこほりこま
うちわたすおとのさむけさ
  暮炭竈
くれぬるかやくすみかまの
みねのそらけふりをくもと
わきやらぬまて