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松尾葦江さんの「「長門切」問題―平家物語成立論の更新」が公開されています

笠間書院さんのPR誌『リポート笠間』59号から、松尾葦江さんの「「長門切」問題―平家物語成立論の更新」が公開されています。

kasamashoin.jp

古筆好きにとってはわりと馴染みのある「長門切(平家切)」、国文関係でも有名でしょうが、おそらくほとんどの方はご存じないかと思います。それもそのはず、装飾のない料紙に墨界墨書、字もうまいんでしょうけど華があるというものではなく、時代も鎌倉末期ころとそれほど古いものでもない。つまり、お客さんを呼べるような作品ではないのです。ですから展覧会などで展示される機会は稀ですし、展示された所でまったく記憶に残らないでしょう。ご存じなくてもなんら不思議はないものです。ちなみに、現在三井記念美術館で開催中の「三井家伝世の至宝」展で手鑑「高㮤帖」が出てますが、私が行った時は裏の冒頭「本阿弥切」2葉から、この「長門切」のところまでを開いていました。おそらくまだ頁替えしていないはず。今なら実物(長門切の現存最大断簡)を拝見することができます。

そういったものなので、ネット上にもあまり情報はありません。1番詳しいのは、佐々木孝浩さんの「巻子装の平家物語 : 「長門切」についての書誌学的考察」。この長門切は原装が巻子装と推定されていますが、なぜ巻子装なのかという興味深い問題を取り上げています。また「和歌と物語」(鶴見大学図書館刊行, 2004)掲載の解説。「(高田)」とあるのは高田信敬さんでしょうか。もう1つ、興味深い断簡について書かれた日比野浩信さんの「数奇な運命 ―伝世尊寺行俊筆平家切―」。解説はありませんが、画像だけなら手鑑「藻塩草」所収断簡がe国宝で見れます。この程度。

しかし、この長門切はわりとホットな古筆切なんですよね。新出断簡が多く出て、他本との本文の比較も進み、書写年代も平家写本のなかで現存最古であることがはっきりしつつある。平家物語の成立・流動を考える際にかなり重要なものだということは、松尾さんの文章を読めばお分かりになるかと思います。

我々一般人には、最新の研究を補足するというのは難しいところがあるので、「長門切」のような話題のものについて、専門の方がきれいに整理し分かりやすく問題を提起したものをPR誌に掲載、あまつさえウェブ公開しているというのは非常にありがたい限りです。