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古写経手鑑「染紙帖」(五島美術館蔵)

先日、五島美術館で開催中の秋の優品展で古写経手鑑「染紙帖」を拝見してきました(10月9日までの展示)。実物を見ると調べてみたくなるのが人情、小さいながらも全32葉の図版が掲載されている図録『五島美術館の名品:絵画と書』(五島美術館、1998年)を購入しつつ少し調べたので、書き記しておこうかと思います。

古写経手鑑「染紙帖」は、益田鈍翁と吉田丹左衛門が作成した手鑑で、奈良時代から鎌倉時代までの古写経断簡が32葉貼られているものです。折帖装1帖、片面で、大聖武から始まり山田切まで。各断簡に鈍翁の筆で伝称筆者や書き出し・断簡通称などが書かれた薄紫色の小さな題箋が附されています。外箱蓋表に打ち付け書きで「古経断片帖」(鈍翁筆)、裏に「昭和四年晩春/花押(鈍翁)」また貼紙印「碧雲台」。

以下、各断簡について。断簡通称はとりあえず図録(p112-113)に従います(いくつか異議あり)。伝承筆者は先述の題箋に基づくものと思われる

http://home.att.ne.jp/grape/koten/somegami1.htm

を利用させていただきました*1。出典は大正新脩大藏經テキストデータベースで確認*2、また小林強さんの『出典判明仏書・経切一覧稿』(大東文化大学人文科学研究所、2010年、NDLサーチ)を参考にしました。翻刻は大正蔵のテキストをベースに図版を見て手直ししましたが、ミスがあるやもしれず、ご利用の際はご注意ください。

1. 大聖武

聖武天皇筆。賢愚経巻17・富那奇品(T0202_.04.0395b04-08)。『一覧稿』p44。

聖武は、平安鎌倉時代の一切経の一部として残る賢愚経と同系統の17巻本であると思いますが、であるとしたらこの「富那奇品」は最終巻17で最終第69品に当たります。

以遊彼國阿難奉命合僧行籌
有神通者明當受請時諸比丘各
各受籌明日晨旦僧作食人名
虔直奇其人已得阿那含道恒
日供給一切衆僧結跏趺以身放

2. 中聖武

聖武天皇筆。金剛三昧経(T0273_.09.0374a17-22)。『一覧稿』p46。

聖武とおなじ荼毘紙ですが、白くはなく、一般的な写経料紙に近い色合いのものです。

爾時菩薩常作化身而爲説法擁護是人終
不蹔捨令是人等速得阿耨多羅三藐三菩

汝等菩薩若化衆生皆令脩習如是大乘決
定了義
爾時阿難從坐而起前白佛言如來所説大
乘福聚決定斷結無生覺利不可思議如是

3. 小聖武

聖武天皇筆。陀羅尼集経巻9(T0901_.18.0862a29-b02)。『一覧稿』p48。

こちらは白い荼毘紙。1行17字で、となりの中聖武と同じ字詰めですが、界高が短いため字は小さいです。図録は縮尺を合せておらず(図版の高さを一致させているので)、却って小聖武の方が字が大きくなっていますね。

結界然後作水壇壇中心著盛五穀瓫言五
穀者一粟二大麥三青科四小豆五稻穀皆
擬後用著數盤食十六盞燈次喚病人於壇

4. 阿弥陀院切

聖武天皇筆。大般涅槃経疏巻1(T1767_.38.0044a16-19)。『一覧稿』p47。

白荼毘紙行書。ツレに「注大般涅槃経断簡(阿弥陀院切) - e国宝」があります。荼毘紙なので奈良時代だと思うのですが、行書経というのに若干の引っ掛かりを感じ、以前から気になってはいるもの。

聞學大乘者雖有肉眼名爲佛眼佛
眼見性了了分明我昔聞善惡涇渭
邪正異轍今聞低彌神龜同皆在水

5. 飯室切

嵯峨天皇筆。註成唯識論(T1585_.31.0050b27-29成唯識論の本文による)。『一覧稿』p3(「円仁(慈覚)」項)。

確か題箋に「嵯峨帝飯室切」と書かれており、それを受けてか図録は「飯室切」としていますが、この断簡を「飯室切」と呼ぶのはためらわれます。『一覧稿』では「円仁(慈覚)」項で、ツレの断簡は「慈覚大師」と極めているのでしょう。「嵯峨帝」は異伝というか鑑定ミスというか。おそらく時代は近い、比較的似た経切なんですけれども。翻刻【】内は割注。

非所縁縁色等時應縁聲等又縁無
法等應無所縁縁彼體非實無縁用
故由斯後智二分倶有【難前也有三難初/難云若捨有漏色不
現無漏色餘之四蘊應亦是無以無相分即無/色故第二難云若此智品不變相者他人之心】

6. 虫喰切

吉備真備筆。成唯識宝生論巻2(T1591_.31.0085a06-12)。『一覧稿』p39。

『一覧稿』では吉備由利願経断簡と認定(巻1は願文含む巻末断簡あり。巻1巻2の断簡諸家蔵)。

復由彼定不是有情於五趣中所不攝故猶
如木石由此故知彼定不應同惡生類如餘
惡生生於此處同受於此所有共苦然彼不
受此之苦故彼趣有情所有共苦不同受故
如持鬘等非那洛迦而諸惡生同受斯苦由彼
共業倶生此處若異此者生尚難得況受害

7. 山門切

小野篁筆。広弘明集巻22・因縁無性論(T2103_.52.0256c04-09)『一覧稿』p31。

以前取り上げた「国立国会図書館デジタルコレクション - 古寫經疏斷簡附人見氏系圖. [1]」(未だこの断簡を山門切と紹介した文献は見つけていませんが、私は山門切だと思っております)について、藤井貞文さんが「上野図書館所蔵古写経解題」*3で「特に筆蹟が秀れてゐる訳でもなく」と書いていたんですよね。私は山門切わりと好きなんですけど、先入観なく(名物切と知らず)見る人が見るとそんな感じなのでしょうか。また「書風から観て、平安中期頃のものであらうか」とし、『国立国会図書館所蔵貴重書解題 第3巻』*4もそれを継承しています。

行善之者反致沉淪以爲自然之命亦不然
也若行善而望報去善更遙脩徳以邀名離
徳逾遠若必挺珪璋之性懷琬琰之心本無
意於名聞曾不欣乎冨貴而英聲必孱雅
慶方臻或可未値知音便同散木不沉別

8. 色紙経切

伝円仁筆。金光明最勝王経巻6(T0665_.16.0429b05-09およびb26- c01)。『一覧稿』p2

「色紙金光明最勝王経断簡」といった方が通りがいいでしょうか。去年根津美術館で行われた「名画を切り、名器を継ぐ」展でいくつかツレが出ていたものですね。紫紙・縹紙4行づつの呼継ぎ。

(紫)
恒河沙等百千萬億諸佛國土於諸佛上
虚空之中變成香蓋金色普照亦復如是時
彼諸佛聞此妙香覩斯雲蓋及以金色於十
方界恒河沙等諸佛世尊現神變已彼諸世
(縹)
提善男子汝當坐於金剛之座轉於無上諸
佛所讃十二妙行甚深法輪能撃無上最大法
皷能吹無上極妙法螺能建無上殊勝法幢
能然無上極明法炬能降無上甘露法雨能

9. 絵因果経切

過去現在因果経巻4(T0189_.03.0650a14-16)。『一覧稿』p13(「空海(弘法)」項)。

これは確か題箋がなかったはずで、伝称筆者の記述は省略。以前少し触れたことがありますが、国宝芸大本から抜けた2紙のうち。

出家者亦願隨從於
是那提迦葉伽耶
葉各與二百五十弟
子至於佛所頭面禮
足而白佛言世尊唯

10. 金剛般若経開題断簡

空海筆。金剛般若波羅蜜經開題(T2201_.57.0001c13-15)。『一覧稿』p14。

金剛般若経開題残巻 - e国宝」や「金剛般若経開題残巻 - e国宝」などのツレです。空海真筆と認定されているもの。

義字義即一切諸法相不可得
義言相者生住等四種相
我人等四種相及九界差別

11. 東寺

空海筆。法華論疏巻下(T1818_.40.0821a19-25また0820b22-28)。『一覧稿』p20。

『一覧稿』では「東寺切」の記載はありません。ツレの2紙の呼継ぎ(3行と3行)。具体的には指摘しませんが、大正蔵と比べると、書写時の単純な脱文と考えるにはあまりに酷いレベルで文が飛んでます。また上辺傷んでいる所に墨色の違う文字。図版が小さいためはっきりしませんが補筆かも。会場ではこれあまりよく見てなかったんですよね、次の機会にしっかりと確認したい。

界本來四絶即涅槃界也不離衆生界有如來藏故者上標
□□以不離釋上即也無有生死若退出者釋第二句初牒
*5謂常恒清涼不變義故者釋經以如來藏常恒清涼不
(継目)
門次第釋迦八相成道示現於伽耶得佛故知化身菩提此
之化身由報身故次明報身菩提報身由法身故次明法
*6菩提就中有二一者標菩提天上總明三種菩提從一者

12. 東寺

空海筆。

『一覧稿』p19の「判比量論《東寺切》」の項に挙がっており、大谷大学図書館蔵の重文とツレのようですが、よくわからず。2紙の呼継ぎ(界線がずれています)で、前5行は因明論疏明燈鈔が「判比量論云」と引用する部分(T2270_.68.0321a19-25)。後2行は確認できませんでしたが、こちらも「判比量論」なのでしょうか。『一覧稿』では「判比量論」のみ「東寺切」と表記しています。

量言眞故極成色定離於眼識自許初三攝眼
識不攝故猶如眼根遮相違難避不定過孱類
於前謂若爲我作相違過云極成之色應非離
識之色自許初三攝眼識不攝故猶如眼根我遮
此難作不定過此極成色爲如眼根自許初三攝眼
(継目)
(2行翻刻略)

13. 讃岐切

菅原道真筆。合部金光明経巻2(T0664_.16.0366a27- b27)。『一覧稿』p56。

細字経で、4字の偈を1行に10句。17字の3倍1行51字詰めでしょうか。「合部金光明経巻第八断簡(讃岐切) - e国宝」や
手鑑「月台」 讃岐切 - e国宝」でツレの断簡が見れますし、また手元に図版もありますが、これは実物と画像でずいぶん印象が違いますね。実物は圧巻、この手鑑中で一番好きな断簡です。

或不恭敬 佛法聖衆 如是諸罪 今悉懺悔 或不恭敬 縁覺菩薩 如是衆罪 今悉懺悔 以無智故 誹謗正法
不知恭敬 父母尊長 如是衆罪 今悉懺悔 愚惑所覆 憍慢放逸 因貪恚癡 造作諸惡 如是衆罪 今悉懺悔
我今供養 無量無邊 三千大千 世界諸佛 我當拔濟 十方一切 無量衆生 所有諸苦 我當安止 不可思議
阿僧祇衆 令住十地 已得安止 住十地者 悉令具足 如來正覺 爲一衆生 億劫修行 使無量衆 令度苦海
我當爲是 諸衆生等 演説微妙 甚深悔法 所謂金光 滅除諸惡 千劫所作 極重惡業 若能至心 一懺悔者
如是衆罪 悉皆滅盡 我今已説 懺悔之法 是金光明 清淨微妙 速能滅除 一切業障 我當安止 住於十地
十種珍寶 以爲脚足 成佛無上 功徳光明 令諸衆生 度三有海 諸佛所有 甚深法藏 不可思議 無量功徳
一切種智 願悉具足 百千禪定 根力覺道 不可思議 諸陀羅尼 十力世尊 我當成就 諸佛世尊 有大慈悲
當證微誠 哀受我悔 若我百劫 所作衆惡 以是因縁 生大憂苦 貧窮困乏 愁恐驚懼 怖畏惡業 心常怯劣

14. 紫切

菅原道真筆。華厳経(80巻本)巻68(T0279_.10.0369c17-25)。『一覧稿』p54。

野稠林險道藤蘿所羂雲霧所暗而恐怖者
示其正道令得出離作是念言願一切衆生
伐見稠林截愛羅網出生死野滅煩惱暗入
一切智平坦正道到無畏處畢竟安樂善男
子若有衆生樂著國土而憂苦者我以方
便令生厭離作是念言願一切衆生不著諸
蘊住一切佛薩婆若境善男子若有衆生樂
著聚落貪愛宅舍常處黒暗受諸苦者我

15. 二月堂焼経断簡

菅原道真筆。華厳経(60巻本)巻24(T0278_.09.0554b09-15)。『一覧稿』p55。

銀字の状態がそれほどいいものではありません。

他諸佛世尊恭敬供養尊重讃歎衣服飮食
臥具醫藥親近諸佛一心聽法能信奉持多
於佛所出家脩道是菩薩樂心深心清淨信
解平等轉更明了住壽多劫若干百千萬億
那由他劫善根轉勝如上眞金爲莊嚴具餘

16. 蝶鳥下絵経断簡

光明皇后筆。法華経巻5・従地涌出品(T0262_.09.0041c14-20)。『一覧稿』p27。

丁子吹金銀泥下絵。『一覧稿』ではこれともと一具だったものを「蝶鳥下絵切」とし、他は類切として4種を挙げます。

小言是我父生育我等是事難信佛亦如是
得道已來其實未久而此大衆諸菩薩等已
於無量千萬億劫爲佛道故勤行精進善入
出住無量百千萬億三昧得大神通久脩梵
行善能次第集諸善法巧於問答人中之寶

17. 目無経断簡

伝静遍筆。金光明経巻4・捨身品(T0663_.16.0354b29- c07)。『一覧稿』p48。

金光明経残巻 (目無経) - e国宝」の佚失部の一部。

捨離以求寂滅無上涅槃永離憂患無常變
異生死休息無諸塵累無量禪定智慧功徳
具足成就微妙法身百福莊嚴諸佛所讃證
成如是無上法身與諸衆生無量法樂是時
王子勇猛堪任作是大願以上大悲勲脩其
心慮其二兄心懷怖懅或恐固遮爲作留難
即便語言兄等今者可與眷屬還其所止爾

18. 草書装飾経切

藤原行成筆。摩訶止観巻2下(T1911_.46.0025a16-19)。『一覧稿』p31

金銀箔撒き、金界墨書、草書。珍しい草書経

道如乾土通教如濕土別教如泥圓教詮
中道如水二教之所不詮二行之所不到
偏空慧眼寧得見性若見性者無有

19. 色絵経切

伝中将姫筆。法華経巻6・如来寿量品(T0262_.09.0042c16-21)。『一覧稿』p51

天地は金銀箔砂子撒き、界内はぼかし染めに銀砂子霞引き、金界、上8字が青字・下9字が緑字。中将姫と極めた理由はよくわかりません。時代は遥かに下って藤末鎌初の装飾法華経

生有種種性種種欲種種行種種憶想分別
故欲令生諸善根以若干因縁譬喩言辭種
種説法所作佛事未曾暫廢如是我成佛已
來甚大久遠壽命無量阿僧祇劫常住不滅

20. 紺紙金泥経断簡

伝中将姫筆。法華経巻7・薬王菩薩本事品(T0262_.09.0054b10-17)。『一覧稿』p51。

紺紙金字。状態良く金字はきれいに残っているのですが、ちょっと赤みがかった色で鈍い輝き。これも中将姫と極めた理由はよくわかりません。時代は遥かに下って平安中期以降でしょう。

是於一切諸經法中最爲第一如佛爲諸法
王此經亦復如是諸經中王宿王華此經能
救一切衆生者此經能令一切衆生離諸苦
惱此經能大饒益一切衆生充滿其願如清
涼池能滿一切諸渇乏者如寒者得火如裸
者得衣如商人得主如子得母如渡得船如
病得醫如暗得燈如貧得寶如民得王如賈

21. 蓮華王院切

白河天皇筆。観無量寿経(T0365_.12.0341a)。『一覧稿』p61。

文字がほとんど剥げていて、その痕跡は残りますが、小さな図版では判読は難しく翻刻略。

22. 清水切

後鳥羽院筆。法華経巻5・従地踊出品(T0262_.09.0039c23-28)。『一覧稿』p23。

土而廣説之爾時佛告諸菩薩摩訶薩衆止
善男子不須汝等護持此經所以者何我娑
婆世界自有六萬恒河沙菩薩摩訶薩
一菩薩各有六萬恒河沙眷屬是諸人等能
於我滅後護持讀誦廣説此經佛説是時娑

23. 装飾法華経

法華経巻2・譬喩品(T0262_.09.0015a27- b01)。

題箋なし。金銀の揉箔をわりと密に撒いた料紙に金界墨書。

爲是等故 方便説道 諸苦所因 貪欲爲本
若滅貪欲 無所依止 滅盡諸苦 名第三諦
爲滅諦故 修行於道 離諸苦縛 名得解脱

24. 太秦

聖徳太子筆。法華経巻4・法師品(T0262_.09.0030c29-0031a02)。『一覧稿』p41。

1行10字の紺紙金字宝塔経。東博が法師品と五百弟子受記品(実際は人記品)の断簡を所蔵していて、展示の際ここで紹介したことがあります。図録でもまた東博も「太秦切」ですが、『一覧稿』では「太秦類切①」(1行9字のを「太秦切」)としています。

藥王若有惡人以不善心
於一劫中現於佛前常毀
罵佛其罪尚輕若人以一

25. 装飾法華経

藤原俊成筆。法華経・常不軽菩薩品(T0262_.09.0051a23-25)。『一覧稿』p38。

鳥羽切。金銀箔砂子野毛撒き、金界墨書。

人説者不能疾得阿耨多羅三藐三菩提我
於先佛所受持讀誦此經爲人説故疾得阿

26. 唐紙経切

伝藤原伊経筆。法華経巻4・見宝塔品(T0262_.09.0033a07-09)。『一覧稿』p38(「俊頼(源)」項)。

七宝繋文。珍しい唐紙経。

爾時十方諸佛各告衆菩薩言善男子我今
應往娑婆世界釋迦牟尼佛所并供養多寶

27. 金銀交書経断簡

仏説普門品経(T0315_.11.0780a23-26)。

題箋なし。金銀金の3行。中尊寺経でしょうか。

其所樂而令解脱有三昧名無會現悦精進
假使菩薩逮斯定者現見無爲無有限數終
始定惑所聞所見莫不通達有三昧名無念

28. 装飾法華経

伝藤原良経筆。法華経・譬喩品(T0262_.09.0012c18-24)。『一覧稿』p66。

茶染めの料紙、天地は金銀箔撒き、界内は斑に色が抜けているのですが何の影響でしょうか? 金の二重界(天地2本づつ、内界から2本づつ罫を引く)に墨書。

大車其車高廣衆寶莊校周帀欄楯四面懸
鈴又於其上張設幰蓋亦以珍奇雜寶而嚴
飾之寶繩絞絡垂諸華纓重敷綩綖安置丹
枕駕以白牛膚色充潔形體姝好有大筋力
行歩平正其疾如風又多僕從而侍衞之所

29. 法華経

慈円筆。大智度論巻73(T1509_.25.0573a16-20)。『一覧稿』p36-37。

図録は「法華経切」としていますが、出典は「大智度論」。

羅三藐三菩提時亦不隨他語須菩提譬如漏
盡阿羅漢不信他語不隨他行現見諸法實相
惡魔不能轉如是須菩提阿鞞跋致菩薩薩
摩訶薩亦如是求聲聞道辟支佛道人不能破

30. 紫紙金字経切

亀山天皇筆。金光明最勝王経巻2(T0665_.16.0409b25- c01)。『一覧稿』p22(「後宇多院」項)。

この断簡に附属していた極札*7に「亀山院」とあって、鈍翁の題箋もそれに従ったものと思われますが、実際には後宇多院宸翰と考えられる紫紙金字金光明最勝王経の断簡。『古筆大辞典』によると、北野天満宮所蔵の巻1巻末に「永仁二載仲冬三五(略)遙慕聖武(略)仏弟子太上天皇世仁」とあるそうです。すなわち後宇多院が1294年に聖武天皇を慕って(つまり国分寺経に倣って)書写したもの。巻2の残巻が奈良博に所蔵されますが、『一覧稿』はこの「染紙帖」断簡を奈良博本の佚失部かとしています。手鑑「もゝちどり」(成城大学蔵)にも似た紫紙金字金光明最勝王経断簡が押されていますが、内容は巻1の巻頭近く。北野天満宮所蔵の巻1も抜けているところがあるのでしょうか? もしくは、『古筆大辞典』はこの紫紙金字経は複数部書写されたと推定しているので、別の巻1の断簡? それともまったくの別物なのか。

二皆是無非有非無非一非異非數非非數
非明非闇如是如如智不見相及相處不見
非有非無不見非一非異不見非數非非數
不見非明非闇是故當知境界清淨智慧清
淨不可分別無有中間爲滅道本故於此法

31. 笠置切

万里小路宣房筆。法華経巻5・安楽行品(T0262_.09.0039a20)。『一覧稿』p49。

爾時世尊欲重宣此義而説偈言
常行忍辱 哀愍一切 乃能演説 佛所讃經
後末世時 持此經者 於家出家 及非菩薩
應生慈悲 斯等不聞 不信是經 則爲大失
我得佛道 以諸方便 爲説此法 令住其中

32. 山田切

伝万理小路藤房筆。因明四種相違私記下巻(T2275_.69.0285b09-11)。『一覧稿』p52。

1行目で1字脱(傍書で補入)、2行目で8字衍(見せ消ち)。ちょっと集中を切らしたでしょうか。

二違二有六論自説一違三有今略叙
一違三有四今略叙一違四有一今亦

*1:ちゃんとメモしてくればよかったんですけど。図録には載っていません。

*2:2015テスト版の存在に今気づきました。利用したのは2012版です。

*3:上野図書館紀要』第2冊、国立国会図書館、1955年

*4:国立国会図書館、1971年、NDLサーチ

*5:この1字不詳。補筆?

*6:この1字不詳。補筆?

*7:図録に掲載。「守村」黒印。古筆家の筆跡の区別はできないので誰かは分かりません。13代了仲?