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「浮世絵の戦争画 ─ 国芳・芳年・清親」展@太田記念美術館

戦後70年を迎え、戦争画についてのタブー視も弱まってきた中で、戦争について描かれた浮世絵という今まであまり注目されず研究が進んでこなかったジャンルを取り上げた展覧会。「戦争画」の言葉がズバリ当てはまる日清日露の頃の作品にとどまらず、江戸時代に描かれた合戦図なども展示しています。

公式サイトの展覧会案内ページはこちら。

http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H2707-ukiyo-esenso-ga.html

公式ツイッターでもいくつかの作品が紹介されています。いずれまとめられると思います。

太田記念美術館 (@ukiyoeota) | Twitter

(追記)
すでにまとめられていました。おそらく展覧会中はツイートが追加されると思います。

浮世絵の戦争画~源平の戦いから日露戦争まで~ - Togetterまとめ
(追記終)

またインターネットミュージアムの展覧会レポート。担当学芸員さんの話や多くの画像が載っています。

浮世絵の戦争画 ─ 国芳・芳年・清親 | 取材レポート | 美術館・博物館・イベント・展覧会 [インターネットミュージアム]

展覧会全体の話はこのレポと公式サイトにお任せして、個人的に気になった作品を6点取り上げたいと思います。

河鍋暁斎《蒙古賊船退治之図》

文久3年(1863)8月
画像はボストン美術館所蔵のものが「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美|山下裕二×井浦新 トークショー 復習ノート 前篇」にあります。ダブル・インパクト展にも出てたみたいですね。ここで指摘されている爆心の赤い斑点は見落としたのか気づきませんでした。それはさておきこの爆発の表現は魅力的。

月岡芳年《魁題百撰相 滋野左ヱ門佐幸村》

明治元年(1868)12月


絵は傷ついた兵士を介抱し水を飲ませる真田幸村を描いています。詞書を読んでみると「士卒に手疵を負へるものあれば自己(みづから)血を吸ひ薬を与え労る事大方ならず」。この「血を吸ひ」を描いて欲しかったなあ。しかし、なんで血を吸うのでしょうか?

月岡芳年《鹿児島 両雄一騎討之図》

明治10年(1877)


上の画像は作品の一部で、全体は静岡県立中央図書館のサイトで館蔵品が見れます(3枚続きで見れるのは1枚づつ。かつ3枚並んだサムネイルは順序が逆です)。
http://multi.tosyokan.pref.shizuoka.jp/digital-library/detail?tilcod=0000000026-SZM0001784
西南戦争での桐野利秋と野津少将の一騎討を描いたもの。一騎討なんていう時代がかった戦いが武者絵の流れをくむ表現にマッチしてます。桐野の華やかな衣装もあって映える1枚。

小林清親《精鋭我軍占領台湾澎湖嶋之図》

明治27年(1894)12月
今回展示されている清親作品では《平壌攻撃電気使用之図》が一番の注目だと思いますが、私が惹かれたのはこちら。画像は「野田市立図書館所蔵資料紹介 錦絵 日清戦争」のb43にあります。右上に炎上する建物。中央左に逃げる清軍、右に追う日本軍が描かれますが暗くてよく見えず。しかし火事の明かりで水面にはその影がくっきりと映っていまして、その姿は戦場の凄惨さを思わせないコミカルな絵になっています。

月岡耕漁《旅順港外大海戦図》

明治37年(1904)3月頃
6枚続きの大画面に描かれた夜の海戦。上掲のインターネットミュージアムの展覧会レポで、1番上に大きく掲載されている作品です。圧倒的な迫力で、今回随一のお気に入り。おそらく水しぶきを表していると思いますが、全体的に胡粉(白絵の具)が撒き散らされています。同様の手法は、尾形月耕《樋口大尉》(白、雪)と尾形月形《遼陽之役敵将黒鳩公戦略齟齬シ総軍大ニ敗ル公勇奮自ラ陣頭ニ立テ決戦ス》(赤茶、おそらく血しぶき)にも見えました。また上に挙げたように河鍋暁斎《蒙古賊船退治之図》にもあったのかもしれません。今春の「若冲と蕪村」展(@サントリー美術館)にでていた伊藤若冲《雪中雄鶏図》(No.29、岡田美術館蔵)にも同様の表現(白、雪)がありました。どのへんまで遡れる手法なのでしょうか。

歌川国芳《人皇十五代神功皇后三韓征伐武内大臣が知勇諸城を落とす図》

弘化2~3年(1845~46)
正直、国芳は見飽きた感がありまして、この展覧会でもいくつか展示されていましたが、いいとは思うんだけど今ひとつ心奪われず。ただ、この作品だけ紙の質感がほかと違っていまして、かなり毛羽立ちが目立つものでした。もともとこういう紙を使っていたのか、保存状態が悪かったのか分かりませんが、それがいい方に作用したと思われ、色合いが他と少し異なって暈けた感じがなんだか妙にいい雰囲気を醸し出しているなあと印象的でした。