読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

五島本源氏物語絵巻の詞書料紙装飾

五島美術館源氏物語絵巻を見てきました。

源氏物語絵巻の詞書の料紙装飾に関心がありまして、最近いくつか文献を読んだのですが、明確にかつ詳細に記述したものがみつからず、どうにもすっきりしない日々が続いておりました。現在、五島美で本物が展示されているということで伺ったものの、まあ結局、本物をみても分からないものは分からない。というわけで、とりあえず軽めのメモを残しておきます。参考にしたのは次の6点ですが、正直あまり読み込めていません。

以下、鈴虫一第1紙は鈴虫一①のように表記します。

鈴虫一①

②と比べすこし色が濃いので染めているでしょうか。中央に大きく直線的な銀砂子の片隈ぼかし。金の大きな裂箔、金銀箔、銀野毛をまばらに。箔・野毛による加飾は少なめ。中央の銀砂子片隈ぼかしを引き立たせるためでしょう。

鈴虫一②

銀砂子の霞引き、金銀の大小切箔、銀野毛。銀の極小箔が目につきます。

鈴虫一③

②に似ていますが、よく見ると結構違います。砂子は銀のみではなく金もあります。また同じく金銀の大小箔、銀野毛撒きですが、目立つ銀箔は②より大きい物が多く、また銀野毛も②より太いものが使われています。更に下絵が描かれます。一つは下辺の下草、左右に2株。よく見ると、どうやら2色使っている様子。ひとつは銀泥?、ひとつは茶系の色。また上辺には左右に雁が数羽づつ。これは墨でしょうか。さらに左辺中央に気になるものが一つあります。

f:id:ouix:20150427205120j:plain
国立国会図書館デジタルコレクション - 源氏物語絵巻. [3]

この赤丸で囲った部分ですが、指摘しているものを見たことがありません。何でしょう? ちなみにこの本は1911年に書かれた模写本。簡易なもので見た目は全然違いますが、かなり参考になります。たとえばこの料紙についても、中央部分に赤くぼんやりと着色しており、どうやら紙を染めて染めむらがあるようですが、この色むらは展示場でもまた図版でもはっきりとは確認できなかったところです。

鈴虫二①②③

似ているのでまとめます。四辻さんによると白の具引だそうで、全体的に白っぽくなっている上に、3紙とも剥落が多くあります。金銀砂子、金銀の大小箔、銀野毛。銀の極小の箔を全体的に撒いていて、①→②→③の順に撒き方が密になり、銀砂子の霞引きも③では太く撒き、似てはいますが変化をつけています。

なお、現存部分をみるかぎりでは、装飾は1紙ごとで、継目をまたいで連続しているものはありません。この似ている3紙も継目で装飾は切れています。料紙装飾は継ぐ前にすべて終えているようです。

余談ながら、詞書は継いだ後に書いているようです。宿木一①②、宿木二①②、東屋二①②③で継目をまたいでいるので。ただ、逆に言うと、現存部分で継目をまたいでいるのがそれだけなんですよね。また図版を確認すると、柏木一②第1行目の「や」の右端が①の下に隠れてしまっている点、御法①最終行の「つ」「ひ」、御法④の最終行の「へ」「の」「む」、早蕨①の最終行の「ひ」の左端が欠けているように見える点など、不審な点もあります。伝来途中で何度か修理・改装が行われているようですが、その時に端を切ったりしているのでしょうか。また図版では端まで載せていない可能性もあります。

鈴虫二④

ぼかし染め、銀砂子、金銀箔、銀野毛。金の極小箔はぼかし染めに合わせて撒いています。

夕霧①

山並みを表現しているかのような銀砂子による片隈ぼかし。型を使っているとのこと。金銀の裂箔大小箔、銀野毛。この料紙、銀砂子と金箔の先後が不明。金箔の上に銀砂子が乗っているように見えるところもあり、逆のところもあり。砂子と箔の装飾順序は、固定されたものではないのでしょうか。

夕霧②

鈴虫二①②③と同じく白の具引。金銀砂子、金の裂箔、金銀の大小箔、銀野毛。

夕霧③

なぜか妙に傷んでいるのが気になるものです。銀砂子金銀箔、銀野毛。銀の極小箔を右上の方を中心に密に撒いています。

御法①

銀砂子を欠く料紙。金銀箔、銀野毛。型抜きを伴うぼかし染め。型は、蝶2つ、巴3つ、海松2つ。巴と海松は型抜したあと、銀泥を差しています。また蝶は型紙を取らずにそのままにして、金泥や緑青などで着色しているとのこと。型を取りはずさないのに型抜きと呼ぶべきなのか疑問ですが、諸書に従います。図版では分かりませんが、会場で実物を見ると、蝶の形の紙が貼り付けてあるのが確認できました。

御法②

こちらも銀砂子を欠いています。金銀箔、銀野毛。

御法③

大きな銀砂子の霞引き。金銀箔、銀野毛。

御法④

かなり大胆な形のぼかし染め。筋が見えますが刷毛痕でしょうか。銀砂子撒きもそれに合わせて崩れた形をしています。金銀箔、銀野毛。金箔はぼかし染めの部分に合わせて撒いています。わりと荒っぽいというか、比較的激しさを感じる料紙。

御法⑤

①から④にかけてどんどん派手に、動きも加わっていくような流れから、一転落ち着いた料紙になります。染色していますが、かなり色むらがあります。銀砂子、金銀箔、銀野毛。銀砂子が他よりも淡い色をしてるんですよね。なぜでしょうか。また全体的に茶色の斑点があるところが気になります。



こうやって書き出してみると、わからない部分が多く、あらためて勉強不足だなあという感じですね。来年の展示までには、もう少しマシにしたい所。いや、それよりも秋までに絵の方も含めてなんとかして、徳川美術館に行こうかな。

徳川美術館・蓬左文庫開館80周年記念特別展 全点一挙公開 国宝 源氏物語絵巻|企画展案内|徳川美術館

ところで、昨日は、源氏物語絵巻についてのギャラリートークも拝聴いたしました。詳しい内容について話すのは避けますが、気になったことを2点だけ。ひとつは、今秋の徳川美術館での展示で、制作年代について新たな発表があるかもという話、楽しみです。まあ、そこまで決定的な話は今さらでてこないでしょうけど。また、五島本を修理するかもという話もでまして、修理すればその過程でいろいろな事が判明するでしょうから、こちらも期待です。