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手鑑「毫戦」

現在、東博本館第3室に手鑑「毫戦」(東博蔵)が展示されています(2015年5月17日まで)。この手鑑について私はほとんど知らなかったのですが、有名な古筆切が多く、興味深く拝見しました。しかし、キャプションではこの手鑑について

本品は全体的に、貼付された古筆切の質が高く、名筆を多く含み、状態も良好である。

とほとんど中身がありません。また詳しく書かれた文献も見つけることができませんでした。とりあえず色々検索してみた結果おぼろげにわかったことは次の通りです。

収録断簡の配列については

C0093972 古筆手鑑_毫戦 - 東京国立博物館 画像検索

から、表は聖武天皇の大聖武光明皇后の蝶鳥下絵経切に始まり、また裏は聖徳太子太秦類切から始まることが分かります。

収録枚数は、収蔵品の整備と次代への継承 - 国立文化財機構

「古筆手鑑 毫戦帖」(書跡)は、奈良時代から江戸時代まで、名物切れ多数を含む筆跡 207枚を収めたもので、高い展示効果が期待される。

とありまして、計207枚とわかります。また作成年代について、スマートフォン・アプリの「トーハクなび」には、

(墨書)「妙法院宮尭恕親王外題/毫戦帖」 外箱の箱書 (墨書)「毫戦」 帙の題簽

と書かれていました。尭恕法親王(1645-90)が箱書を書いているとすれば、江戸時代前期の成立なのでしょう。ただ、極札は古筆本家6代了音(1674-1725)のものがいくつかあるようで*1、後世にだいぶ貼替えが行われたのか、それとも作成時代がもっと下るのでしょうか。

展示は表で、冒頭の「聖武天皇聖武」から末尾の「坊門局 惟成弁集切」まで、途中たたみつつ37葉です。以下、各断簡を見て行きたいのですが、詳しく調べだすとキリがないので、古筆学大成(学大成と略します)を参照する程度にとどめました。



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聖武天皇 大和切

賢愚経・兒誤殺父品(T0202_.04.0418a28- b03)。

聖武はおそらく17巻本で、該品は第8巻第38品。なお大聖武のこの品の品題は見たことはありませんが、同じ17巻本の七寺一切経本ではでは品題も「見設殺父品」と異ります。*2



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光明皇后 鳥ノ下絵切

妙法蓮華経巻第三・信解品第四(T0262_.09.0017c25-0018a04)。


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後鳥羽院

新古今集巻十八。学大成10新古今和歌集21「伝後鳥羽天皇筆 水無瀬切本新古今和歌集」図150。

水無瀬切は縦長四半(例えば「新古今和歌集巻第十九断簡(水無瀬切) - e国宝」)ですが、この断簡は正方形に近いのが奇妙です。学大成の解説によると、「紙継ぎ痕は不分明ながら、中央のあたりで、巧みに継ぎ合わせて一紙分に仕立てたものであろう」とのこと。切り継いでこの形にしているものだそうで。継目をまたいだ「は」と「ひ」の右側の部分は補筆でしょうか。墨色に違いがあるように見えます。

       西行法師
なさけありしむかしのみなをしのはれて
なからへまうきよにもふるかな
       清輔朝臣
なからへはまたこのころやしのはれむ
うしとみしよそいまはこひしき
  寂蓮人/\すゝめて百首哥よませ
  侍けるにいなひ侍て熊野にまう
  てける道にてなにこともおとろへ
  ゆけとこのみちこそすゑにかはら
  ぬものはあれなをこのうたよむへ


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後鳥羽院 記録切

よく分からないので飛ばします。


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後深草院 消息

同じく。


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亀山院 四半切

出典未詳。学大成不掲載。

出光美術館の別府節子さんは、この断簡を「金剛院類切」Ⅱと分類しています。1葉のみでツレはないとのこと。「歌意から「郭公」を題に詠む。散る松葉が描かれた料紙で、書風は「金剛院切」に酷似」し、金剛院切で同じく郭公を歌う手鑑「藻塩草」所収断簡(歌集断簡(金剛院切) - e国宝)の前後に位置するものである(つまり金剛院切である)という可能性を指摘しつつも、「料紙のモティーフ」の相違から「一応類切に分類」しています。*3

ほとゝきすやよとまてとも
 かたらはし世にすむかすに
       あらぬ身なれは


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花山院殿尹大納言師賢卿 

源氏物語の和歌を抜書きしたもの。ただ3首目と4首目の間に「あらはれて云々」の歌1首抜けています。学大成23源氏物語和歌3「伝花山院師賢筆 松尾切本源氏物語和歌」図386。

学大成の解説に「もとは巻子本であった」とありますが疑問。図379と385に綴じ穴らしきものが確認できます。おそらく単純な誤記誤植かと。この断簡では11行目「兵部卿宮」と12行目「けふさへや云々」の間が不自然で、さらに最終行「や」の隣に墨痕、最終字「き」の左端が切れています。やはり冊子本で、11行目までが1ページ(左端の余白を切断)、12行目から次のページ(右端余白及び左3行ほど切断、おそらくサイズ調整)、その2ページを継いだものでしょう。

    ほたる
  ほのかなるひかりえんなることのつまにもし
  つへくみゆ     兵部卿
なくこゑもきこえぬむしのおもひたに人のけつにはきゆる物かは
  おもひしりたまひぬやときこえたまふ
            たまかつら
こゑはせて身をのみこかすほたるこそいふよりまさる思ひなるらめ
  なとはかなくきこえなして御みつからはひきい
  り給宮よりはふみありしろきうすやうにて
  御てはいとよしありてかきなし給へり
            兵部卿
けふさへやひく人もなきみかくれにおふるあやめのねのひなるらん
  ためしにもひきいてつへきねにむすひつけ
  給へり けふめつらしかりつることはかりをそ
  このまちのおほえきらはしとおほしたる
            はなちるさと
そのこまもすさめぬくさと名にたてるみきのはのあやめ今日やひきつる
  とおほとかにの給  六条院
にほとりにかけをなにふるわかこまはいつかあやめにひきわかるへき


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大炊御門殿信量公

連珠合璧集。学大成不掲載。「http://base1.nijl.ac.jp/infolib/meta_pub/KHTDefault.exe?DB_ID=G0000402KHT&GRP_ID=G0000402&DEF_XSL=default&IS_TYPE=csv&IS_STYLE=default」で確認すると文彩帖、世々の友、文車にツレがありそうです。

みをつくしトアラハ
 しるし ほりえの川 すみよしまうて
  わひぬれはいまはたをなしなにはなるみをつくしてもあはんとそおもふ
 十一地儀
トアラハ
 あらかね 壁 あら小田をかへす 黄なる色 ありのかよひ
 地 佛をつくる すさのをの御ことの哥 てる日■■■さく
つちくれトアラハ塊也
 鳩 やふらす 雨
野原トアラハ

3字読めず。


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飛鳥井殿雅経卿 今城切

古今集巻十六。学大成3古今和歌集40「伝飛鳥井雅経筆 今城切本古今和歌集」図164。

今回の展示では、いくつかの断簡について断簡通称と出典、筆者(伝称筆者)を記したカードを博物館が用意していました。今城切に付されたカードには「飛鳥井雅経筆」と書かれています。隣の八幡切の筆者は「伝飛鳥井雅有筆」であることからわかる通り、筆者が伝承に過ぎない時には「伝」をつけて区別しています。とすれば「伝」を付けない今城切は雅経筆であると東博は主張しているようです。

すみそめのきみかたもとはくもなれや
はれすなみたのあめとのみふる
  をんなのおやのおもひにてやまて
  らにはへりけるをあるひとのとふ
  らひにつかはせりけれはかへりこと
  によめる   よみひとしらす


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飛鳥井殿雅有卿 八幡切

後拾遺集巻九。学大成8後拾遺和歌集14「伝飛鳥井雅有筆 八幡切本後拾遺和歌集」図320。

もと冊子本。巻九巻末部分でページ替えをしているため余白があります。

みわたせはみやこはちかくなりぬらん
すきぬるやまはかすみへたてつ
  をなしみちにて
さよふけてみねのあらしやいかならん
みきはのなみのこゑまさるなり


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飛鳥井殿雅■

極札1字読めず。

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よく分からないので飛ばします。

  里梅
うすくこきにほひにつけてをちこちの
里まてしるきむめのしたかせ


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久我通親公 龍山切

千載集巻十六。学大成9千載和歌集7「伝源通親筆 龍山切本千載和歌集(二)」図269。

学大成は龍山切を2つに分けています。ざっと図版に目を通した限り一番目立つ違いは、一方が和歌2行書き他方が3行書きであること。

  さきにはらへしたまひける
  御ともにて女房のもとにつか
  はしける
    八条前太政おほゐまちきみ
きのふまてみたらしかはにせ
しみそきしかのうらなみ
たちそかはれる
  賀茂のいつきかはり給


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久我通雄公 山口切

和漢朗詠集巻上。大成15和漢朗詠集53「伝久我通雄筆 山口切本和漢朗詠集」図262。

うちつけにものかなしき木の葉ちる
秋のはしめをけふとおもゑは  素性
  早秋
但喜暑随三伏去不知秋送二毛来 答蘇六/白
槐花雨潤新秋地桐葉風涼欲夜天 秘省後聴/白


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久我長通

後撰集巻十三。学大成11新後撰和歌集6「伝久我長通筆 安芸切本新後撰和歌集」。

        按察使実泰
なくさむるわかあらましに待なれて
さのみねぬよのかすやかさねむ
  宝治百首歌めしけるついてに寄関
  恋     後嵯峨院御製
きくたひになこその関の名もつらし
ゆきてはかへるみにしられつゝ


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六条有忠卿 愛宕

和漢朗詠集巻上・春・霞。学大成不掲載。

ツレは翰墨城、藻塩草、文彩帖、観音寺蔵手鑑にあり、藻塩草では「新宮切」と呼ばれています(和漢朗詠集巻上断簡(新宮切) - e国宝)。

  霞
霞光曙後殷於火草色晴来嫩似煙 
鑚沙草只三分許跨樹霞纔半段余 
きのふこそとしはくれしかはるかすみ
かすかのやまにはやたちにけり 立春 人丸
はるかすみたてるやいつこみよしのゝよし
のゝやまにゆきはふりつゝ


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紀貫之 高野切

古今集巻五。学大成1古今和歌集1「伝紀貫之筆 高野切本古今和歌集 第二種」図36。

以前取り上げた謎断簡です。切り出し? 複本?

  あきのうた
          かねみのおほきみ
たつはひめたむくるかみのあれはこそ
あきのこのはのちらさなるらめ


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小野道風 経切

大般若波羅蜜多經卷第四百七十三(T0220_.07.0394a02-04)。


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小野道風 本阿弥切

学大成1古今和歌集4「伝小野道風筆 本阿弥切古今和歌集」図149。

ら我みのありてなしあはれとやいはむあ
なうとやいはむ     山さとはものゝわひ
しきこともあれよのうきよりはすみよ
かりけり   これたかのみこ
しらくものたえすたなひくみねにたにす
めはすみぬるよにこそありけれ
   ふるのいまみち
しりにけんきゝてもいとへよのなかはなみ
のさはきにかせそしこめる


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佐理卿 綾地切

白氏文集巻五・松声。学大成25白氏文集5「伝藤原佐理筆 綾地切本白氏文集」。

学大成解説では、10世紀後半ごろの書写と推定しています。1葉のみでツレの掲載はありません。

雨秋琴冷々絃一聞滌


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藤原清輔朝臣

古今集巻五。学大成3古今和歌集44「伝藤原清輔筆 古今和歌集切(三)」図306。

          忠峯
あきのよのつゆをは露とをきなから
 鴈のなみたやのへをそむらん
  たいしらす   よみ人もシラス
あきのつゆ色こと/\にイロ/\コトニおけはこそ
 山のこの葉もちくさなるらめ
  もる山のほとりてよめる
            貫之
白つゆもしくれもいたくもる山は
 したはのこらすいろつきにけり


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四条大納言公任卿 兼輔集切

兼輔集。学大成17兼輔集2「伝藤原公任筆 砂子切本兼輔集」図149。

砂子切は、本願寺本と同時代に作られた別セットの三十六人家集と考えられているもので、筆者の異なる兼輔集・業平集・公忠集・中務集の断簡が残っており、このうち兼輔集・業平集・公忠集の筆者は本願寺本にも参加、兼輔集は藤原定信筆と推定されています。

ふちなみのたちもかへらす
 君とまれとそ
  又あるし
あかぬまにきみかゝへらはふちの
はなかけてさくにやこひわた
るへき
  またおとゝ
昨日みしはなのかをとてけふ
みれはねてこそさらに
    いろまさりけれ


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四条大納言殿公任卿

法華文句記卷第十下(T1719_.34.0352c27-0353a06)


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源俊頼朝臣 東大寺

三宝絵下巻・比叡懺法。学大成25三宝絵1「伝源俊頼筆 東大寺切本三宝絵」図230。

しむひろく願の文をあらはしてときことに
そへよましむちかひてともし火の光をかゝ
けていまにまたきえす春夏秋冬のはし
めの月にいたることに十二人の塔もちて
三七日のせむ法をおこなはしむ弘仁二年
六月四日大師をはりたまひぬあやしき雲のみ
ねをおほひてひさしくさらすとほき人


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基俊朝臣 多賀切

和漢朗詠集巻上・春・三月三日。学大成14和漢朗詠集25「藤原基俊筆 多賀切本和漢朗詠集」図199。

水成巴字初三日源起周年後幾霜 縈流送羽觴/篤茂
礙石遅来心窃待牽流波遄過手先遮 雅規
夜雨偸湿曾波之眼新嬌暁風緩吹不言之
唇先咲 桃始華 紀
みちとせになるてふもゝのことしより花
さく春にあひそしにける 亭子院哥合 躬恒


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藤原顕輔卿 鶉切

古今集巻十四。学大成4古今和歌集47「伝藤原顕輔筆 鶉切本古今和歌集」図102。

鶉切は唐紙で、いくつかの模様がありますが、これは鶉(野の中の鶉)。学大成の図版ではその模様がくっきり表れています。ただ残念ながら今回会場でははまったく見ることができませんでした。

  人をしのひにあひしりてあひかた
  くありけれはその家のあたりをま
  かりありきけるおりにかりのなくをき
  きてよみてつかはしける
        大伴くろぬし
思ひいてゝこひしき時ははつかり
 なきてわたると人しるらめや
  右のおほいまうちきみすますなりに
  けれはかのむかしをこせたりけるふみ
  ともをとりあつめて返すとてよみて


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藤原清輔 内裏切

古今集巻十二。学大成3古今和歌集43「伝藤原清輔筆 内裏切本古今和歌集(二)」図261。

      みふのたゝみね
かきくらしふるしらゆきのした
きえにきえてものおもふころにも
           あるかな
      藤原おき風
きみこふるなみたのとこにみちぬ
れはみをつくしとそわれはなりぬる
しぬるいのちいきもやすなとこゝ
ろみんたまのをはかりあはんと
           いはなん

勘物、左は「卅六人」ですが、右は2字読めず「■■哥合」。


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平業兼 春日切

未詳家集。学大成18未詳家集1「伝平業兼筆 春日切未詳家集」図174。

学大成解説によると春日切は「いく種かの家集を類聚書写した家集群であったことを想定するのである」とのこと。13世紀半ごろ。

せめてはるをしむまの心まとひ

 さくらの花のすさましく
 さきてみえしに
よの人のめつるさくらもわかや
とはうの花にこそさけはみえ
けれ


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高階重経卿

顕註密勘抄。学大成24顕註密勘抄3「伝高階重経筆 顕註密勘抄切」図190。

これをおもへはけたものゝくもにほえけむこゝちして
ちゝのなさけもおもほえすひとつ心そをそろしき
  けたものゝくもにほえけむこゝちしてとは淮南
  王は仙薬を服して仙になりてのほれる人也
  その仙薬のこりのうつはものにつきたるを
  くひたりし犬鶏なとの仙になりてそらに
  のほれりしかくものうゑにてほえ雲のうへに
  てなきたりし事也
かくはあれともてるひかりちかきまほりのみなりしを
たれかはあきのくるかたにあさむきいてゝみかきより


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万里小路殿宣房卿

妙法蓮華經卷第三化城喩品第七(T0262_.09.0023b24-c06)。笠置切。


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世尊寺殿伊経卿 戊辰切

和漢朗詠集巻上・春・鶯。学大成15和漢朗詠集27藤原伊行筆 戊辰切本和漢朗詠集」図36。

東博は伊経筆と見ているようです。

なお、学大成の解説に「さて、この「戊辰切本和漢朗詠集」は、昭和三年〈一九二八〉の分割に際して、複製本作成の企ても起こされることなく、にわかに分断されてしまった。」とありますが、神戸女子大が複製本を所蔵しています。当時は知られていなかったのでしょうか。

稀書展示目録:神戸女子大学古典芸能研究センター

所収の詩歌句の記述がわかりにくいですよね。上巻1〜16, 18〜73, 78, 81〜396、下巻397〜533, 535〜602, 604〜677, 679〜796, 798〜804ということだと思われ。

うくひすのこゑなかりせはゆきゝえぬ
山さといかて春をしらまし


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世尊寺殿行能卿

和漢朗詠集巻下・文詞附遺文。学大成不掲載。

錦帳暁開雲母殿白珠秋写水精盤
昨日山中之木材取於己今日庭
前之花詞慙於人 雨来花自湿詩序/藤篤茂
王朗八葉之孫摭徐■事之旧草
江淹一時之友集范別駕之遺文 
陳孔章詞空愈病馬相如賦只凌雲
贈爵新恩銘刻石獲麟後集世知丘 安楽寺霊廟/以言
いつはりのなきよなりせはいかはかり
人のことのはうれしからまし

1字読めず。


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世尊寺経朝卿

千載集巻十二。学大成不掲載。

学大成9には千載和歌集19「伝世尊寺経朝筆 千載和歌集切」という項があり、5葉ほど図版が掲載されています。見比べるとかなり似ているので「毫戦」断簡もこのツレのような気がするのですが、なぜか採用されず。

いのちにかへぬあふよしもかな
        賀茂重保
にしきゝのちつかにかきりなかりせは
なをこりすまにたてましものを
  百首哥奉し時恋哥とて
        前参議教長
いかはかりこひちはとをきものなれは
としはゆけともあふよなからん


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世尊寺行尹

和漢朗詠集巻上・春・款冬。学大成不掲載。

天地に金界、おそらくもと巻子本。陽明文庫蔵「大手鑑」に貼られた伝行尹筆の和漢朗詠集断簡(春・三月三日)のツレかも。手鑑大成の解説によると「金界あり」で、図版をみると同じく天地のみ。字形も似てます。

わかやとのやへ山吹のひと
へたにちりのこらなんはる
のかたみに


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紫式部 久海切

古今集巻十四。学大成1古今和歌集16「伝紫式部筆 久海切本古今和歌集切」。

舶載唐紙で剥落激しく読みづらいので翻刻は省きます。また台紙にはひとまわり大きな断簡を剥がした痕が残ります。


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民部卿

後撰集巻十七。秋篠切。学大成7後撰和歌集16「伝民部卿局筆 秋篠切本後撰和歌集切」図27。

  なりける女おなしくるまにてつらゆきか
  いへにまうてきたりけりつらゆきかめの
  まらうとにあるしせむとてまかりおりて
  侍けるほとにかの女を思かけて侍けれは
  しのひてくるまにいれ侍ける
          つらゆき
なみにのみぬれつるものをふくかせの
たよりうれしきあきのつりふね


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阿仏 角倉切

古今集巻十一および十二。学大成5古今和歌集87「伝阿仏尼筆 古今和歌集切」図168。

伝阿仏尼筆の角倉切は後撰集断簡なので*4、これは角倉切と呼ばないほうがいいでしょう。2葉を合わせたもので前5行が巻十一、後2行が巻十二。この前半の断簡について学大成の解説では「上段を極細に、そして下段を筆太にかいている。一紙のうちに市松形に筆の変化を見せて、美的効果を発揮しているのは、すこぶる注目をあつめる」と書きます。

おなしこゝろにいさむすひてん
はるたてはきゆるこほりののこりなく
きみかこゝろはわれにとけなん
あけたてはせみのおりはへなきくらし
よるはほとるのもえこそわたれ
いとせてこひしきときはむはたまの
よるのころもをかへしてそきる


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坊門局 歌集切

惟成弁集。大成19惟成弁集1「伝坊門局筆 惟成弁集切」図37。

    いひそむる人に
うらわかみおきのしたはにおくつゆを
さもほのめかす風のなき哉
    ちかとなりなるいへにしはし
    すむ人に山まきのいとおもしろ
    きをおりてやりたるに物
    もいはねは
なかなれやいふにまされる花のいろは

*1:古筆学大成によります。

*2:興津香織「日本伝来『賢愚経』の復元的研究」仙石山論集 3, 49-78, 2006-09, CiNii

*3:別府節子『和歌と仮名のかたち:中世古筆の内容と書様』笠間書院、2014年、NDL search

*4:増補古筆名葉集・阿仏尼「角倉切 四半後撰哥二行雲帋又ハ白帋」、国立国会図書館デジタルコレクション - 増補古筆名葉集 2巻