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東京でも古写経が展示されています

正倉院文書研究会」で、京都国立博物館奈良国立博物館での古写経展示が紹介されています。

いいもん出てるなあと羨ましい限りですが、東京国立博物館も負けず劣らずの古写経展示があります。特にちょうど今の期間(3月8日まで)は本館だけでなく法隆寺宝物館でも見れるので充実してますよ。

というわけで、現在展示中の作品をご紹介。

本館 1室

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 仏教の興隆―飛鳥・奈良 作品リスト
2015年2月24日(火) ~ 2015年4月5日(日)

称讃浄土仏摂受経

1巻|奈良時代・8世紀|B-1158

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また以下にも画像あります

1998年から99年にかけて行われた修理の際に、紙の原料について調査が行われました。全9紙のうち、5紙までがマユミと雁皮の混抄、6紙以降がマユミのみで作られた紙で、上の写真はその境目を中心に撮ったもの。色合いの違いは原料の違い故でしょうか。マユミを原料にするとごく小さな粒粒が無数に混ざります。いわゆる「荼毘紙」というもので、それが用いられた最も有名な写経が「大聖武」(後出)。

灌頂経 巻第九

1巻|奈良時代・8世紀|B-1159

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こちらも荼毘紙。軸付紙に見える文字は「巧浄成」と読めそうです。巧浄成は宝亀年間の活動が確認できる経師。聖語蔵経巻「神護景雲二年御願経」のうち灌頂経巻第六*1が巧浄成写*2。僚巻でしょうか。

藍紙金光明最勝王経断簡

1幅|伝聖武天皇筆|奈良時代・8世紀|B-53-1-2

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また

金光明最勝王経巻第六・四天王護国品第十二。

昨年の根津美術館「名画を切り、名器を継ぐ」展に出品された「色紙金光明最勝王経断簡」(No.12, 13)の図録解説に「染紙帖」(No.11)所収断簡とともにツレとして挙げられている「東京国立博物館所蔵の断簡一幅(縹七行)」にあたるものです。そしておそらく「C0094407 藍紙金光明最勝王経断簡 - 東京国立博物館 画像検索」の2葉*3もツレでしょう。これらすべて近い所です。

本館 3室

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 仏教の美術―平安~室町 作品リスト*4
2015年2月24日(火) ~ 2015年4月5日(日)

紺紙金字無量義経(平基親願経)

1巻|平安時代・治承2年(1178)|B-3098

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また

僚巻はフリーア美術館に巻第七、MOA美術館に巻第八、センチュリーミュージアムに観普賢経が残ります。MOAの巻第八は『MOA美術館名宝集成』(NDL search)に見返しと巻頭部分の画像が掲載されています。また個人蔵の巻第五が伝存し、2010年福井県立美術館で開催された「シルクロードと東アジアの仏教美術」展で展示されており、その時のチラシとその頃の美術館だよりに画像が載ります。2013年から2014年にかけてサントリー美術館で開催された「天上の舞 飛天の美」展でも個人蔵の基親願経が出品されているようです(出品目録)。同じものだと思いますが、未確認。

観普賢経の巻末奥書は「治承四年庚子七月甲申廿八日戊寅奉寫了/白衣弟子平基親」。

この治承四年(1180)の年記のある奥書を有する観普賢経が蔵されるセンチュリーミュージアム、またフリーア美術館、福井県立美術館、サントリー美術館が一致して年代を1180年と記しているのに、東博がこの無量義経の年代を「治承2年(1178)」としている理由は不明。

見返しにぼんやりと模様が浮かんでいます(中段の写真)。表紙の模様の裏写りでしょうか。

法華経玄賛 巻第六

1巻|石山寺伝来、中田祝夫氏旧蔵|平安時代・9世紀|個人蔵
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よく分からないので、キャプションに頼ります。

 『法華経』を7世紀後半に、法相宗学の立場から注釈したもの。本巻は、紙背の継目に「元興寺印」があり、かつて元興寺の所蔵であったと推測される。文中の朱・白書の訓点のうち、ヲコト点は順暁和尚点で、石山寺淳祐内供の周辺で行われたものである。

飯室切に近い印象。

【重文】法華経分別功徳

1帖|鎌倉時代・建長5年(1253)|滋賀・宝巌寺蔵

これは撮影禁止でした。またネット上で画像は見当たりません。とりあえずキャプションを引用させていただくと、

 『法華経』分別功徳品第17を書写する。もとは巻子装。金泥二重界線内に本文を墨書し、上下欄外に金銀泥で蓮弁、菱文などを描き、草花を空摺りであらわす他、金銀切箔、野毛、砂子を撒く。さらに料紙の裏面全体にも金銀泥の文様を施した華麗な装飾経である。

草花の空摺りは金泥の菱文のところに摺られたのがはっきり見えました。見応えのある華麗な装飾経で、写真で紹介できないのは残念ですが、現地に行ってのお楽しみということで。

【重文】法華経(久能寺経) 安楽行品

1巻|平安時代・12世紀|B-2396-2

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また

久能寺経の安楽行品。原装の見返しに絹地の痕跡が残ります。軸頭は平家納経の薬草喩品のものと似てますね。

法華経

1巻|藤原定信筆|平安時代・12世紀|個人蔵

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藤原行成の玄孫・定信の筆跡と推定されるものです。現時点では「藤原定信 - Wikipedia」には挙げられておりません。

妙法蓮華経文句 巻第四 断簡 (唐紙経切)

1幅|伝藤原行成筆|平安時代・11世紀|B-2461

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また

花唐草文の舶載唐紙。経論には珍しく行書体で書かれています。

蝶鳥下絵法華経断簡

1幅|平安時代・11世紀|個人蔵

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方便品。距離があったためはっきりしなかったのですが、キャプションによれば丁子吹とのこと。蝶鳥は似たものが複数存在していて、まだ私は整理できておりません。とりあえずは丁子吹かその他染紙か素紙か、箔の有無、書き込みの有無あたりが区別するポイントでしょうか。

法隆寺宝物館 第6室

東京国立博物館 - 展示 法隆寺献納宝物(法隆寺宝物館) (休館中) 書跡:古経典、染織:在銘幡 作品リスト
2015年2月10日(火) ~ 2015年3月8日(日)

賢愚経断簡(大聖武

1帖|奈良時代・8世紀|N-11
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また

賢愚経巻第五・沙彌守戒自殺品第十九。先に出た荼毘紙です。ちなみに私が一番好きな写経。

【重文】梵本心経および尊勝陀羅尼

2枚1帖|浄厳筆(附)|後グプタ時代・7~8世紀/江戸時代・元禄7年(1694)|N-8

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また

般若心経の現存世界最古の(梵本)写本、般若心経の本によく紹介されているものですね。「般若心経 - Wikipedia」にも見えます。一緒に展示されているのは(上の写真左)、浄厳が1694年に書いたこの梵本心教の読解。

【重文】法華経(三)

8巻のうち1巻|奈良~平安時代・8~9世紀|N-12-3

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また

【重文】梵網経 下巻

2巻のうち1巻|平安時代・9世紀|N-13-2

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また

e国宝の解説によると、紺紙の表紙と水晶の丸軸は原装とのこと。前掲の基親願経もおなじ紺紙金字経ですが、紺紙の印象が違います。こっちの方が魅力的です。基親願経は同時代(平安末期)の紺紙金字経と同様。この梵網経の紺紙は、私が見た中では道長の金峯山埋経に比較的近いかなと思います。

【重文】勝鬘経

1巻|鎌倉時代・13世紀|N-15

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また

見返し絵は聖徳太子勝鬘経講讃図。中央に聖徳太子、時計回りに大兄皇子、高麗法師恵慈、小野妹子蘇我大臣馬子、百済博士学哥。聖徳太子が3日間の勝鬘経講説を終えると蓮華が降ったという故事に基づきます。見返し絵および本紙天地に舞う蓮弁はその散華の表現。見返し絵の右4分の3は鉛白が黒変するなど痛みが生じています。

新装の太い軸に埋め込まれているのは原装の軸頭でしょうか。

仏画写経貼交屏風(写経)

平安~江戸時代・12~19世紀|N-3

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仏画写経貼交屏風から剥がしたもの。展示会場のキャプションでは時代は「奈良~鎌倉時代 8~13世紀」となっていました。ということは、この中に奈良写経が混じっているということ? 2枚目かなあ。

順に大般若経巻第十四、梵網経下巻、大集経巻第十五、残り3葉は大般若経巻第五百八。6枚目のが最初、11行あいて4枚目5枚目が連続します。ツレっぽい。

*1:No1162およびNo1707①。実際には神護景雲経ではなく今更一部一切経だそうです。

*2:飯田剛彦「聖語蔵経巻「神護景雲二年御願経」について」正倉院紀要第34号、2012年。PDF

*3:詳しく言えば2行2行4行1行の4葉

*4:なお、現在アイキャッチとして使われている「国宝 法華経 方便品(竹生島経)」は展示されていません。もともと展示する予定だったのか、それとも竹生島・宝巌寺蔵の「法華経分別功徳品」が出品されているので混乱したか。