読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

金剛峯寺所蔵の国宝・法華経巻第六(色紙)の料紙装飾の順序

現在、東博・本館2室に展示されている和歌山・金剛峯寺所蔵の「法華経巻第六(色紙)」。状態のいい華麗な料紙で、かなり見応えのある作品です。キャプションには書かれていませんでしたが、『古筆大辞典』「色紙法華経」によると名古屋市の笠覆寺に僚巻(巻五・重文)が所蔵されているとのこと。また巻末47行は別筆のようです。

さて、その古筆大辞典から、この巻の料紙に関する記述を引用してみます。

料紙は三十七張、紫・茶・黄・緑・藍のそれぞれ濃淡の各張に、白紙の飛雲紙を継いで、繧繝の配色にしている。縦二四.三センチ、界は高さ一八.二センチ、幅一.八センチの金界を引き、金・銀砂子を撒き、切箔を置いて、天地及び紙背に蝶・鳥・草花を描き、非常に優雅である。

また、東博の展示キャプションは次のように記しています。

料紙は、さまざまな色彩の色紙37枚を貼り継いで、金で界線を施した上に金銀箔を散らし、欄外や紙背には花鳥の文様を描く華麗なもの

この両者の料紙装飾の説明は似ていて、取り上げる順序がピタリと一致しているんですよね。つまり

色紙→継ぎ→金界→金銀箔散らし→下絵(→墨書)

という順。そしてこれが実際の作業手順だという風に読めなくもないような書き方なんですけれども、本当にそうなのかなと疑問があったり。とくに箔散らしと下絵の順序がこれでいいのかなあと。

先ず紙を染めるという工程が第1なのは間違いないでしょう。ちなみに古筆大辞典にあるように飛雲紙もあり、当然漉きかけもこのタイミング。次に、事前に決めた配色で料紙を継ぐ。続いて金界。箔や下絵が金界の上にのっているように見える箇所があります。次が下絵(銀泥?)ではないかなあと思うんですよね。下絵の上に箔と見えるところがあるので。金銀箔を散らして、墨で経文を写す。その後、軸や表紙をつけて完成。

また、紙背の装飾はどのタイミングでしょうか。継いだ直後に紙背装飾を済ませてから、表の装飾に入ると考えますが、如何。ちなみに、上では指摘されていませんが、紙背にも箔(金?銀?両方?)を散らしている様子です。また、紙背の下絵の様子は、表にうっすらと裏写りしている箇所があって参考になります。

なお、東博の公式サイトで検索すると、この写経は2005年2009年2010年2012年2013年、そして2015年の6回の展示が確認できます。このうち2005年の展示での「時代・年代世紀」の表記が「平安時代・平治元年(1159)」となっている点が気になります。単なるミスなのか、それともそんな説があったのか。他はすべて「平安時代・12世紀」です。