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東博に展示されていた二つの太秦切

先日東博を訪れた際、太秦切が2点展示されていました(展示は終了しています)*1

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 仏教の美術―平安~室町 作品リスト

分かりにくいので、ここでは仮に前者をA、後者をBと呼びます。

Aは法師品の「藥王今告汝我所説諸經」(大正9巻31頁中段15行)から始まるもので、展示は一部でしたが、古筆大辞典*2には「東京国立博物館には「法師品」一巻が所蔵されている」と書かれているので、法師品の品末まであるでしょうか。

Bは「五百弟子品断簡」とありますが、SAT DBで調べてみると、どうやら次の授学無学人記品のようです。また経文の順序が入れ替わっています。すべてを撮影しなかったのではっきりしないのですが、巻頭「善逝世間解無上士調御」(同30頁上段18行)から始まり「無量億千萬功徳不可數」(同中段2行)まで写真では確認できます。巻末は「所同時發阿耨多羅三藐」(同上段3行)で終わっていて、写真では「此義而説偈言」(同29頁下段16行)まで遡れます。こんなことならちゃんとすべて撮影しとくべきでした。

両者の一部拡大写真を載せておきます。

A
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B
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写りの関係で写真では多少違って見えますが、実際にはそっくりです。パッと見、同じものに見える。ですから、もともと一具のものだったんだろうなと思ったわけですが、しかし、キャプションによるとこの二つは別物みたいなんですよね。

左がA、右がB
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Aの宝塔は金泥で描いたものとしていて、Bの宝塔は雲母で摺り出したものだと言っています。結果としてかなり似た料紙ですが、装飾の方法が異なるならば、やはり別物だと考えた方がいいでしょうか。同じ料紙に見えたんですけどね。よくよく見ると筆跡も異なるかも。

古筆大辞典の太秦切の項では、東博に所蔵されている法師品一巻(つまりA)と青蓮院に所蔵されている安楽行品一巻について、「宝塔を金泥で描いていると」記しています。また、書芸文化院に見宝塔品の25行断簡がありまして、展覧会図録『春敬の眼:珠玉の飯島春敬コレクション』*3では「紺紙に黄味がかった雲母で一行あたり一〇基の宝塔を型刷り」と解説しています。これはBのキャプションの記述と一致するので、ツレなのでしょう。