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伝越部局筆「阿野切」の特殊表記和歌

手鑑「見ぬ世の友」の「101 伝 越部局 阿野切」におもしろい表記を見つけました。

古今集の断簡で、和歌1首を2行書き。しかし、最後の1首は第2第3第5句を小字双行に書き、1行に収めています。

いま私が見ているのは、モノクロの粗い図版なのではっきりしませんが、右側に綴じ穴らしきものが見えるので、冊子本丁表の最終行にあたるところだと思います。ということは、ページまたぎを避けた表記でしょうか。

画像は

  1. 見ぬ世の友 : 国宝手鑑 出光美術館蔵 (平凡社): 1973|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
  2. 見ぬ世の友 (出光美術館): 1973|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
  3. 書 (出光美術館): 1992|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

にあります。私が見ているのは2。3は「古筆切DB」の情報で未確認。あまり大きな画像を載せる本ではなかったような覚えがあります。一番いいのは1のはず。ただこれもモノクロでしょう。


さて、この特殊表記和歌、近年話題になったところでは、源氏物語の議会図書館本のものがあります。

 議会図書館本の表記の特徴として、特殊表記和歌が挙げられる。一行で続けて書かずに、割注のような二行書を交えた表記方法を用いている。ここでは便宜的に特殊表記和歌と呼称する。
(略)
 また、特殊表記和歌に関する考察には、豊島秀範(二〇一〇a)、神田久義(二〇一一)がある。豊島秀範(二〇一〇a)では、特殊表記和歌は「巻の内容に応じて、詠者や、歌の数などを、全体のバランスを配慮して採用している」と述べ、書写者が意図を持って特殊表記を用いていると推測する。一方、 神田久義(二〇一一)では、改頁する直前の和歌を議会図書館本のような特殊表記にする事例が冷泉家時雨亭文庫蔵『秋風和歌集』にあることを指摘し、頁の最終行に特殊表記で和歌を記載した祖本から書承を重ねる過程で行数が変わり、特殊表記の本来の意味が失われた段階の議会図書館本に至ったと推定している。

高田智和・斎藤達哉「米国議会図書館蔵『源氏物語』について―書誌と表記の特徴―」(PDF)

この議会図書館本は桐壷、須磨、柏木の画像がウェブ上に公開されており、このうち須磨に特殊表記和歌が含まれています。


また、こういった特殊表記で私がまず思い浮かべるのは元永本です。

53コマ最終行、86コマ最終行にあります。172コマ1行も似た表現です。

55コマ最終行、188コマ最終行です。

上巻の53コマと86コマ及び下巻の55コマの3例は、丁表の最終行ですし、ページまたぎよけと考えてもいいかもしれません。ただ、下巻の188コマの例では、結局次ページにまたがってしまっています。

似たような例として、下巻の33コマ、40コマ、54コマ、62コマ、67コマ、106コマ、107コマなどに見える2行目末の双行は、2行におさめるための表記法でしょうか。