読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

平安時代に袋綴(線装本)というアナクロニズム

 一枚目の上段の図柄は、『紫式部日記絵巻』(重文、旧森川家本、第3段)からのイラスト化だと思われます。道長の妻である源倫子が、若宮の敦成親王を抱いている場面でしょう。

 下段に描かれている書籍は、四ツ目綴じ(あるいは康煕綴じ)です。『日本古典籍書誌学辞典』(1999年、岩波書店)によると、「四つ目綴じ」の項目に次のような説明があります。

中国明代に隆盛を見た糸綴じ線装本の影響を受け、わが国室町初・中期よりこの装訂法が起り、以後和本の写本・刊本を通じての主流となった。(594頁)

 平安時代を背景とする『紫式部日記絵巻』と一緒に、この綴じ方の本を配するのが適当であったかどうか……。雰囲気のイメージ化すなので、平安も鎌倉も室町も一括りで「古典」ということなのでしょう。

鷺水亭より: 茶化された古典の日(11月1日)にちなむ記念切手

伊藤鉄也さんによる古典の日記念切手の図柄に対する批判です。リンク先の続きを読めばひどい話だなあと思うわけですが、ただこの平安時代に袋綴というアナクロニズム1点に絞って言えば、よく見かけるミスなので、批判よりは周知に力点を置いた方がいいような気がします。

最近、平安時代を舞台とした漫画続けて3作品でこのミスを見つけたんですよね。漫画家さんだってちゃんと資料集めて絵を描いている筈なんですよ。想像で適当に描いているわけじゃない。資料に平安時代の冊子本はこういうものだよという絵あれば、それを参考に描くでしょう。こんな単純な誤りはしないと思います。つまり、手頃な資料を用意出来ていないから、それが彼らのもとに届いていないからこうなるわけです。袋綴で描いてしまうわけです。

まあ漫画のミスにいちいち目くじらを立てる必要もないんですけどね。

ただ、たとえば角川学芸出版角川ソフィア文庫ビギナーズ・クラシックスの表紙でもやっているとなると、文句を言ったり批判したりする段階ではないのかなとも思います。

紫式部日記  ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)

平安時代中期の冊子本はほとんど残っていないので、実際どういうものだったのかというのを推定するのは難しいところではありますけれども、分かる範囲でわかりやすく伝えてほしいなあと思います。用語すらまともに統一されていないですからね、この分野は。門外漢が学ぶにはつらいジャンルであります。苦労しました。