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存星展

先日、五島美術館で開催中の存星展に行って参りました。

実は先週も伺ってじっくりたっぷり見てきたのですが、帰って図録を眺めていたら、やっぱり本物をもう一度見たいという気持ちがふつふつと湧いてきましての再訪。先週と今週でいっさい展示は変わっていないにも関わらず、2度も足を運ぶなんて経験は初めてで、しかも2度目でも満喫しました。かなり見応えのある、そして興味深い展覧会です。私が今年訪れた展覧会ではベストでしたね、断トツ。オススメです。

展覧会のテーマは「存星」とは何か? というものですが、それについてここで書くのはやめておきます。なかなか複雑で、下手に手を出すよりは専門家にお任せした方がよさそうですから。展覧会図録または「淡交」2014年10月号などをご覧ください。

淡交 2014年 10月号 [雑誌]

淡交 2014年 10月号 [雑誌]

正直、会場でキャプションを読む程度ではなかなか理解し難いかと思います。作品見るのに忙しいですからね、説明なんて読んでいる場合ではないですよ。また少し展示がわかりにくいってのもあります。展示は4部に分かれるのですが、内側の展示ケースの入口側が第2部で、奥側が第3部なんですよね。あの展示室は外周を回った後、内側の展示ケースを見るのが自然な流れなのですが、そうやって見ていくと構成が崩れてしまう。結果、主張を汲み取れないと思います。その点展示にひと工夫あってもよかったかと。

しかし、その主張、研究成果自体が非常に面白く興味深いものではあるんですけど、それはさて置いたとしても、展示品の魅力だけでも十分に行ってみる価値があると思います。存星とは何かなんて考えなくても、十分に楽しめるのではないでしょうか。

展示品はほぼ全て存星と呼ばれたもの、またはそれに類するもの。存星にはいろいろあると言っても、漆器であることには間違いないんですよね。しかも漆器の双璧といえば蒔絵と螺鈿でしょうが、それらは存星とは呼ばれていない。というわけで出品されているのは、彫彩漆、填漆、漆絵などで、かなり幅の狭い展示です。じゃあつまらないのかというと、そんなことはなくて、むしろ、その幅の狭さが功を奏してましたね。同じ技法を用いながら様々な表現があることが見比べられる、幅が狭いゆえに奥の深さを感得できるものでした。馴染みの薄いジャンルでは知識や鑑賞の蓄積がないため作品の魅力を見出すのが難しいものですが、この展覧会ではそういった問題が起きる心配はありません。

なかでは、なんといっても彫彩漆ですよ。こういう技法があるのは初めて知りました。見入りましたね。とくに「松皮文彫彩漆盆」(No.27)と「蓮弁文彫彩漆盆」(No.28)。何と言ったらい良いかよくわからないですが、とにかくすごい。前者については五島美術館のFBで写真があげられているので、ご参照ください。

https://facebook.com/gotohmuseum/photos/a.521083981253228.130501.519638818064411/950762131618742/?type=1&source=46&refid=17

ぱっと目に入るのは、こういった色のグラデーションが印象的な作品なんですが、一方色を彫り分けて絵を描いているタイプの彫彩漆も、細かく見れば、その差1ミリもないんじゃないかという絶妙な彫り分けで求める色を出す超絶技巧に感服です。漆は比較的彫りやすい素材なのか、精細な彫り物が多くありました。

もちろん填漆や漆絵もいいのがあります。

「木目塗丸盆」(No.51)は木目というよりはマーブル模様で、図録解説を読むと漆絵っぽいですが、どうやって描いたんだろう? 「現代でも製作されている変わり塗りの一種と共通する」とのこと。似たようなものがあれば欲しいな。

「七宝繋文填漆櫃」(No.49)は変った填漆作品で、横方向に塗り重ねるという謎のキャプション。図録を読んでなるほどと思いました。お楽しみのために、ここでネタを割るのはやめておきます。

填漆では、やはりポスターにも使われた「楼閣人物図填漆箪笥」(No.50)が随一。雲の部分は複数の色漆を同時に使ってるのでしょうか。色が混じりあう部分がおもしろい。「龍寿字文填漆円筒形箱」(No.62)もなかなか。鯉の吐く「寿」字がかっこいいですね。

「斑紋丸香合」(No.42)と「斑紋一文字香合」(No.43)はともに漆絵の一種なのかな? 後者は残念ながら照明の暗さ故か展示室では映えませんでしたが、写真で見る限りは好みです。前者は、実物見て惹かれた品。見たことない不思議な感じ。

忘れちゃいけない「狩猟図彫彩漆長盆」(No.5)。松屋三名物のひとつ「存星長盆」(所在不明)と共通する特徴を持つと推定されるもので、出品作品中一番の存星、存星オブ存星と言ったところでしょうか。見事です。ちなみに今読んでいる某書(数年前に出版された最近の本)では松屋の存星長盆について「填漆」としていたのですが、間違いなのか、それとも填漆説もあるんでしょうか。ちなみにこの松屋の存星長盆は、1923年に益田鈍翁が入手、1930年に使用した記録が現在確認できる最後のものだそうです。見てみたいものですね。出てきて欲しいなあ。


企画し準備した方々の気持ちを感じるいい展覧会でした。期間は12月7日までです。