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馬蝗絆茶甌記

馬蝗絆青磁の伝来・伝承が記された伊藤東涯「馬蝗絆茶甌記」の画像(一部)を見つけたのでリンクを貼っておきます。

C0024515 馬蝗絆茶甌記 - 東京国立博物館 画像検索


また「国立国会図書館デジタルコレクション - 大正名器鑑. 第6編」に翻刻本文がありましたので、転写しました。返点は省いています。

   馬蝗絆茶甌記
器之尚古也何諸。其多閲歳月免乎水火之難逃乎碎裂之厄、完全以傳久、斯可尚。已説其精細巧緻經古人鑒賞、載名流於識、其益可珍哉。昔安元初、平内府重盛公、捨金杭州育王、現住佛照、酬以器物數品、中有青窰茶甌一事、翠光瑩徹、世所希見、唐陸龜蒙詩云、九龝風露越窰開、奪得千峰翠色來。或云錢氏有國時、越州燒進、不許臣庶用、故云祕色、豈其是乎。相傳謂之砧手、慈照院源相國義政公得之、最其所珍賞、底有璺一脈、相國因使聘之以送之大明、募代以佗甌、明人遣匠以鐵釘六鈴束之、絆如馬蝗、還覺有趣、仍號馬蝗絆茶甌。相國賜之其侍臣宗臨、享保丁未之春、予得觀之于宗臨九世孫玄懷之家、予固非博古者、然其華雅精緻、宜爲前世將相所尚也。嗚呼傳之自其祖先、賜之自其祖之君、得之自平内府、以至于今、則已五百六十餘年、自慈照公到今亦已向三百年、可謂善傳矣、豈止其器之精巧與經名公鑒賞而已哉。非家道修、官業成、世不先其守、曷能寶傳至斯乎。其所以欲永祖深而裕後昆者、不可以不可、以不記、及其請文也、奚亦辭焉。
  享保丁未仲春
             京兆 伊藤長胤謹撰


板橋村だより:陶磁器(11)-青瓷盤口鳳耳瓶(南宋/龍泉窯)」に書き下しがあります。



さて、この「馬蝗絆茶甌記」について、例えば「青磁茶碗 銘馬蝗絆 - e国宝」の解説では

平重盛所持の伝承は、龍泉窯青磁の作風の変遷に照らして史実とは認めがたいものの、足利将軍家以降長く角倉家に伝えられていたことから、伝承には信憑性がある。

と信憑性を認めていますが、一方で疑わしいと考える方もいらっしゃるようで。


馬蝗絆の由緒 - なにがし庵日記

確かに、数百年後の文献を安易に信じるのは危険ですよね。考えてみれば怪しい気もします。「国立国会図書館デジタルコレクション - 大正名器鑑. 第6編」が挙げる文献も「馬蝗絆茶甌記」が最古のようですし、「馬蝗絆は突然江戸時代に現れた茶碗のように見える」というのも宜なるかな。

どこまで疑うべきでしょうか。もちろん重盛云々は話になりませんが、しかし砧青磁の名品であればあるべき所に収まる可能性が高いので、義政所持の伝承はある程度は信じていいのかもしれません。裏付けは必要ですけれど。ただ、明に送って云々は、そういう目で見ると作り話っぽい感じがします。できすぎた話ですよね。単純にヒビが入ったから修理しただけなんじゃないかと。もちろんその場合、わざわざ明に送る必要はないわけで、日本で修理したのではないでしょうか。だとすれば、その修理時期は義政時代よりずっと下がるのかもしれません。