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近衛家熈筆「新歌仙」翻刻

日本の書 (別冊太陽 日本のこころ)』(平凡社)をめくっていたらおもしろい作品を見つけたので翻刻しました。

近衛家熈の「新歌仙」(107.3×36.3cm、陽明文庫蔵)、新三十六歌仙をグラフィカルに書写したものです。

ネット上で見れるのは、モノクロの粗い画像で上9分の7で切れている「国立国会図書館デジタルコレクション - 陽明文庫図録. 第3輯」だけでしょうか。翻刻はかなり味気ないものになってます。草仮名を区別したり、線の肥痩を表現することができないなどなどの理由で。本物は下に掲げた翻刻よりはるかに視覚的におもしろいので、興味のある方は上の本をご覧ください。

不勉強ゆえの間違いやケアレスミスなどあると思いますので、ご利用の際はご注意を。

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  左           後鳥羽院
龍田姫風のしらへも聲たてつ秋やきぬらんおかのへの松
  右           式子内親王
なかむれは衣手すゝし久方のあまのかはらのあきの夕くれ
              土御門院
いせのうみ天原なるあさかすみそらにしほやく煙とそみる
              皇太后宮大夫俊成卿女
下もえにおもひきえなむ烟たにあとなき雲のはてそかなしき
              順徳院
ほの/\とあけ行やまのさくらはなかつふりまさるゆきかとそ見る
              前内大臣
雲のゐるとを山ひめのはなかつらかすみをかけて吹あらしかな
              仁和寺
荻の葉に風の音せぬ秋もあらはなみたの外に月は見てまし
              前大納言忠良
夕附日さすやいほりの柴のとにさひしくもあるかひくらしのこゑ
              後法性寺入道前関白太政大臣
霞しく春のしほちをみわたせはみとりを分るおきつしらなみ
              土御門内大臣
おりしもあれ月は西にも成ぬらんくものみなみにはつかりのこゑ
              後京極攝政前太政大臣
そらは猶かすみもやらす風さえてゆきけにくもるはるのよのつき
              前大僧正慈圓
身にとまるおもひをおきのうはゝにてこのころかなしゆふくれのそら
              西園寺入道前太政大臣
桜花峯にも尾にもうへをかむみぬよのはるを人やしのふと
              大納言通具
石上ふるのゝさくら誰うへてはるは忘れぬかたみなるらむ
              後徳大寺左大臣
なこの海の霞のまよりなかむれは入日をあらふおきつしら波
              藤原清輔朝臣
しはのとに入日の影はさしなからいかにしくるゝやまへなる覧
              權大納言基家
秋深幾紅葉濃底の松の戸はたか住峯の庵なる覧
              宜秋門院丹後
吹拂嵐乃後能高根より木葉くもらて月や出らむ
              前中納言定家
しら玉の緒絶のはしの名もつらしくたけて落る袖の涙に
              從二位家隆
限あれは明なむとする鐘の音に猶長きよの月そ残れる
              参議雅經
白雲野絶間児名飛具青柳乃葛城耶麻仁春風處吹
              二條院讃岐
山高微峯能嵐荷散花乃月尓安満幾流明可堂農空
              右衛門督為家
たち残す梢もみえす山さくらはなのあたりにかゝるしら雲
              藤原隆祐
けふはなをみやこも近し逢坂の関のあなたに知人もかな
              大藏卿有家
朝日影にほへる山の桜花つれなく消ぬゆきかとそみる
              源具親朝臣
はれくもるかけを都に先たてゝしくると告る山のはの月
              宮内卿
かきくらし猶ふる郷の雪のうちに跡こそみえね春は來に鳧
              藤原秀能
あし引の山のふる路迹絶て尾上の鐘につきそ殘れる
              殷富門院大輔
春風の霞吹とく絶間より亂てなひく青柳のいと
              小侍從
いかなれはその神山の葵草年はふれとも二葉なるらむ
              藤原信實朝臣
あけてみぬ誰玉章を徒にまた夜をこめて帰る鴈金
              源家長朝臣
春雨に野澤の水はまさらねと萠出る草そ深くなり行
              寂蓮法師
かつらきやたかまのさくら咲にけりたつたの奥にかゝるしら雲
              俊恵法師
ふるさとの板井のし水みくさゐて月さへすますなりにける哉
              皇太后宮大夫俊成
又やみむかたのゝみのゝさくらかりはなのゆき散春のあけほ*1
              西行法師
をしなへて花のさかりになりにけりやまのはことにかゝるしらくも





日本の書 (別冊太陽 日本のこころ)

日本の書 (別冊太陽 日本のこころ)

*1:「の」脱か