読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

和田彩花さんの春信についての記事がすばらしい

スマイレージというアイドルグループの和田彩花さんという方が、春信の「雪中相合傘」について書いているのですが、これがなかなかいい。

【和田彩花(スマイレージ) 「浮世絵10話」】 第一話 鈴木春信「雪中相合傘」 | asianbeat

まずなんといっても、このご時世に春信について語っているというのがうれしいですよね。奇想派人気の高まりで、猫も杓子も北斎国芳、奇抜な絵を描かずんば浮世絵師にあらずみたいな昨今。いや、誇張して言ってますけど、ただコア層はともかくライト層での人気は圧倒的で、代わりに美人画や役者絵の絵師が隅に追いやられている感じがあるわけですよ。たとえば太田記念美術館はこの夏特別展『江戸妖怪大図鑑』をやるわけですが、これが3部構成で3ヶ月にわたる力のこもったもの。人気だしお客さんをよべるからこそできる展覧会ですよね。もちろん私も行きますよ、楽しみにしています。

しかし、そんな風潮の世の中で、いっさいお構いなしに自分がいいと思ったものを語る、しかもそれが春信だっていうのが憎い。私も好きな絵師だというのもありますが、流行と真っ向対立する作風の春信を推すというのが新鮮にうつるわけです。もちろん、この記事はシリーズ物で浮世絵について10回語る予定なわけで、だとすればそのうち1回は春信が占めるというのは当然ですよ。誰が選んだって、浮世絵師として春信は十指に入る。でも、この記事はあきらかに、歴史的に重要だからなどという目配せによって選び書かれたものではないですよね。実物を見て感動して調べて書いています。

そしてこの見る能力、観察眼がまたすばらしい。しっかりと作品と向き合い、そこに込められた技術や表現を汲み取れるんですよ。もちろんキャプションなどを参考にしたんでしょうけど、それを適切に鑑賞に活かしているなあと思います。周辺の知識を増やして知った気になるのではなく、作品自体を見ることができる人ですよね。この記事を読んですぐに『乙女の絵画案内 「かわいい」を見つけると名画がもっとわかる』を購入拝読したのですが、この本でも同じことを感じました。実際に作品を鑑賞している時の描写がなかなか読みでがあります。

更には、絵を見た上での解釈や想像の面白さですよね。雲の上を歩いているようだ、ひょっとしたら女性の夢の描写なのかもなんて、当否はともかく楽しいですよ。私は絵画を見るのはあまり得意ではないのですが、その一つの理由がこういう想像力の欠如でしょう。まったくこんなこと考えもつかない。ただそれは逆に言えば、和田さんのような導き手がいればいいわけですよ。楽しめるわけですよ。私のように想像力の貧弱な人間にはこういう記事は貴重なのです。

奇想派が幅を利かせるこの時代に、ライト層向けのこんなにいい春信の記事がふと出てきたことに不意をつかれ、興奮のあまりにちょっと褒め過ぎな感もなきにしもあらずですが、それを差し引いてもなかなかいい書き手じゃないでしょうか。絵画に興味をもったのが2010年4月に訪れた「マネとモダン・パリ展」だそうですが、アイドル活動のしながらたった4年でこんなの書けるとか、いやほんとすごいと思います。